2004年11月期

薄刃、蛸引き関係

前回の蕎麦切り包丁砥ぎはお役に立ったでしょうか?さてさて今回は、
薄刃と蛸引関係の直線についてです。最近の傾向では、蛸引きは全く
注文が無く注文があっても1、2本程度、先丸蛸引などの方が回転率は良い感じです。

そもそも蛸引包丁は、椅子に座って使用する関東型の柳刃と言う話聞いた事があります。
下記図を見て頂ければわかる様に、真っ直ぐ引くので直線が有効になるのかも知れません。

左写真のように、切っ先を抜き行くと
食材を刃の点で切る感じになります。
蛸引きを使うならば、まな板と平行に
引き切る必要があるかも知れません!
和包丁は通常引き切りするので、刃が
多少凸凹していても切れるかも知れま
せんが、食材を実際に切り終える部分
が、一点に集中しそうです。
まな板に均一にあたるのが理想でしょう。
通常蛸引のまな板当たり 切っ先を抜きに行った時
先丸蛸引の反り入りバージョンです。
この方が抜きに行きやすい感じを受け
ませんか?デザイン的な事もあるかも
知れませんが、食材を美しく切ってくれ
そうな感じがします。
先丸は、包丁自体が反っているので、極端
に言えば、真ん中が高くなっています。
ん〜胸を張っている感じでしょうか・・。
形状を保つには切っ先部分の反りを生かす
研ぎが必要でしょう。
先丸蛸引のまな板当たり 切っ先を抜き行った時
比較する為に、柳刃も撮ってみました。
刺身専用の包丁と言われるだけあって
抜く感じが爽やか(笑)包丁なりに抜けて
行く印象を受けました。
柳刃の研ぎは、皆さんご存知の通りです。
唯一言うならば、コンコルドにしない様に!
切っ先をもっと上げても良いかも!!!
↑これは憶測(好みの問題)
柳刃のまな板当たり 切っ先を抜き行った時
この写真で何が言いたいのかと言うと、何も
無いんですが(^^;微妙な反り具合を比較し
て頂きたく撮影してみました。
思ったのが、先丸蛸はカッコいい!!
柳刃も良い感じがするのですが、蛸引は何
か魅かれる物が薄い・・・。もしかしたらその
先に濃い世界があるかも知れないです。
蛸引と先丸蛸引の切っ先 蛸引、柳刃、先丸


先丸蛸引は、デザイン的な事もありますが、現代的な蛸引包丁なのかも知れません。
何が現代的かと言うとまな板の前に立って仕事(調理)をするので、先が反ってるいる
方が包丁を抜き易いと言う考えです。

蛸引のウンチクもほどほどに、昔ながらの蛸引を使う人も居ると思いますので、
一応研ぎや選定方法紹介しておきましょう!

蛸引と薄刃包丁選定方法!
絶対にチェックが必要なのは、歪み!蕎麦でも言いましたが、
曲がっていると絶対に真っ直ぐ刃が付きません!
包丁の曲がりをチェックする際、刃側をしっかり見る事です。
背中側が、真っ直ぐでも刃側が曲がっていたらアウトです。

背中が曲がっていて、刃が真っ直ぐってどういう事?
っとなりますが、これは包丁が捻れてると言う事です。
この包丁は、刃付け屋さんがタガネを打って治すしかありません
ナイフシステムでも会社では治す事は不可能です!

これらをクリアすれば、次ぎに裏の状態です。包丁が真っ直ぐなら
裏の状態もそれなりに良い裏付けがされてると思います。
裏の状態を見る点は、裏の凹凸を見る事です。
凸凹していると、裏押しした際に刃が薄くなったり厚くなったり
します。均一に刃が付かないと言う事になります。

曲がりと裏付けを見る終われば、表のシノギ筋を見ます。
包丁に対して直角に見ると綺麗ですが、平行に見ると曲がってる
場合もあります。使用するのには、そんなに支障が無いとは思いま
すが、シャキっとした包丁を買うにこした事はありませんし!!

上記全てをクリア出来る包丁で、パッと持ってしっくりくる包丁
が見つかれば買いですね! これらをクリア出来る包丁となると
白二鋼鍛造以上の包丁になると思います。
しかし、希に変な包丁が混じっているので、チェックして下さい。

蛸引&薄刃の研ぎ方!(薄刃で紹介しています。)
基本的に、曲がっていない包丁として話しを進めましょう!
包丁はシャキっとしていても、砥石が曲がっていたら包丁を壊し
ます。どんな場合でも砥石は絶対フラットにしましょう!

面直しをしてある事を前提にスタートします。
欠けたりしていない場合は、中砥からでOKです。
普通の包丁同様に、砥石に対して45℃で研いで行きます。
刃先に欠けがある場合、先にそれを大まかに取ってしまいましょう!
@欠けを中砥で取る!

その後、シノギ筋側から刃先に向かって研ぎ込んで行くのが良いと
感じています。刃先から研ぐと、刃先意外を研いでいる時に砥石に
当ったりして痛める可能性があるからです。
シノギ筋から刃先に向かってドンドン研いで行きます。
Aシノギ筋側から刃先へ研ぐ
Bシノギ筋から刃先に向かう
C刃先部分の研ぎ

@の時に欠けを取ると断刃になっていると思いますで、中砥でその段を綺麗に
取っておくと後の作業が楽です。あまり刃を伸ばす(薄く)するとヘロヘロになる
ので、ある程度の薄さでStop!本当に薄くするのは仕上げ砥でやりましょう!

この時注意したいのが、薄刃の場合完全フラットにすると刃が弱く
なり欠け易い包丁になってしまいます。
中砥で、こころもちハマグリ刃を意識して研ぎ上げて行きましょう。

逆に、蛸引は切刃幅が狭いのでフラット気味にしても良いと思います。
かと言って、超フラットにすると良く無いのはご理解頂けると思いま
すので、適度にハマグリをいれるなどして下さい。

注意!研石との角度45℃の場合刃先を研ぐ際は、均一に力を入れる
    ことが重要です。力が入った部分が良く研げてしまい、刃が凸凹
    になる場合があります。←コレが一番難しい!

Dカエリが出るので簡単に裏押しでカエリを取ります。あまり研がないようにしましょう!
 中砥は研削力があるので、裏を研ぎ過ぎると調節が難しくなります。

中砥でドンドン研ぎ上げて、ある程度モラ(研ぎムラ)が無くなれば仕上げ砥へ行きましょう!
ここで切り刃部分を光らせるなり中砥での曇りを残すなどは自由です。
化粧研ぎな感じですし、光らせるとへばり付くと言う方も居られます!


仕上げ砥ぎ!


仕上げ砥は中砥ほど、研削力はありませんが、中砥で刃先を伸ばしている場合
気を抜くと欠けたりする場合もあります。刃と砥面の接触点に集中して研ぎましょう!

表から研ぐ場合はマダ良いのですが、裏を研ぐ時が最も神経を使って
欲しい作業です。裏押しの際に事件が多く発生するのではないでしょうか?
ベタに置いて裏を研ぐのですが、この時ゆっくり研ぐ事が重要ですね!
早くやると、写真の様に包丁が角に立ったりして盗みに入ります。
見た目が悪いのと、下手すると大きく欠けたりします。本焼などは特に注意!

押す時に力を入れるとカエリが良く取れますが、手を滑らさないようにして
下さい。裏も表同様、均一に押して行きましょう!

 

光らせたく無い場合は、刃先部分に指先を置いて研げば、刃先のみが光ります。
指の下が研げると言う事なので、切り刃全てを光らせる場合は指の位置を変えて
研いで行きましょう!顔などが綺麗に写れば最高ですが、写らない場合は凸凹が
あると言う事ですので、しんどいですが中砥へ戻りましょう!
切り刃に凸凹があっても刃先が綺麗ならば問題ないですが、包丁へのこだわりが
あるのならば、美しく仕上げたいものです!

左上写真の指の位置に注目!砥石で指を研ぐ・・・っと言う程にキワキワを押さえます。
本気で刃を付けに行くなら、この状態が理想!ただし指に穴が空くかも・・・。
右上写真は、左の指位置で研いだ場合の刃先光り具合!

裏押しは、ゆっくりと噛み締めるように行いましょう。押す時に力を入れると刃先側
が研げます。引く時に力を入れると背中側が研げます。包丁と砥面の接地部分に
全神経を集中させましょう!

 

恐いのが上の写真です。ここまで酷く傾く事は無いでしょうが、傾くと裏にキズが入りますし、
その部分だけ刃が薄くなります。本焼の場合は割れるかも・・・。
右の写真は、左の写真時に故意で付けた裏のキズ!

上記が、普通のテキストに載ってる研ぎ方だと思います。何の問題も無く、
それらを実践すれば良いと思いますが、ちょっと一工夫した研ぎ方を紹介!
基本的には、蕎麦切り包丁と同じ研ぎ方なのですが、薄刃、蛸引には柄の
部分があるので、ちょっと違うかも知れません!

通常砥石に対して45℃で研ぐ角度を70℃位にします。これで少し直線
を出しやすくします。砥石面がフラットの場合、常に刃先が砥石に当って
いるので、出っ張った所は自然に研げます。しかし、砥面が曲がっている
と砥石なりに研げますで、直線が出ない可能性もあります。

やや平行に近い角度 通常の角度

ちょっとの角度差にしか感じないかも知れませんが、実際に研ぐと角度差を実感出来ると・・・思います。

 

裏側も平行気味で研ぐとよいでしょう、しかし、面直しを確実に行わないと大変な事に!

裏側も通常は砥石に対して直角なのですが、それを45℃以上に保ち研ぎます。アゴ周辺は
柄が砥石に当るので、直角にします。この時も砥面が曲がっていると裏側がヘロヘロになる
ので注意です。面直しが面倒ですが、砥面がしっかりしていれば安定した研ぎが可能です!
仕上げ砥も裏側を平行気味で! アゴ周辺は柄が当るので直角気味に!
この裏押し方法だと、包丁が傾く事が無いので、少々安心です。邪道かも知れませんが、
こういう研ぎをする職人さんも居ます!

最後に、糸引き刃を入れると良いでしょう。
通常は表からのみですが、裏側からも一回だけスゥ〜っと砥面を撫でるだけで刃が少しですが、強くなります。
裏に糸引きを入れ過ぎると、裏押ししても裏の刃が砥石に当らなくなるので、一回だけ!
スゥ〜っと引いてください!
しかし、薄刃に関しては、絶対にハマグリを入れないとダメだと職人さんは口を揃えます。
これを機会にハマグリ刃を是非習得する事をお薦めします。

表側を写真ほどの角度で研ぎます。
2,3回軽く撫でる程度でOKです。
裏側は手前に引く感じで一回引きます。
写真は手前に引いた後の図ですね!
この作業は、主にステンレス系に行う作業ですが、刃を強くする為に行うと良いでしょう。
職人さんは、裏もスゥ〜っと研いでます。ナイフシステムから出荷する際は、裏をベタ研ぎ
して裏糸引きを取ってしまいます。(基本的に裏は立てて研がないですし!)

職人さんが、何故に裏を引くかと言う事ですが、一つはカエリを完全に取る為!
もう一つは、刃を強くするためです。いくらハマグリを入れても薄刃などは繊細で欠け易い
と言えます。工場からナイフシステムまでの間に欠ける事を防ぐ??

じゃあ、ナイフシステムで裏をベタ研ぎして出荷したら、配達中に欠けるの?
っとなりますが、会社から出す時は箱に入っていますし、紙サックもされているので安全
です。まあ、思いっきり投げられたり落とされたりしたら欠けるかも。。。。ですね!

補足:薄刃ってそんなに簡単に欠けるのか?っとなりますが、そんなに欠けません(笑)
    爪に乗せても(爪の上で刃をウニウニさせる)意外に粘りがあります。
    但し、1点集中で衝撃を与えると欠けます!ネタケースの角に当てるなどすれば
    一撃でしょう! オーバーな表現が多いですが、注意するに超した事が無いと言う事で!

11月中旬に、10月17日(日)に行われた「砥石の日」イベント?のレポートを特集でUPします。
この時、酔心特集ご愛読の皆様にお土産を買ってきました!(^^)/
「何?何?」ですが、日本人特有の「つまならい物ですが・・・。」的な物です。
レポートの後に、アンケートをご用意します。それに記入して頂いて送信して頂ければ応募完了です!
このアンケートですが、これから良い包丁を製造するにあたり、皆様からのご意見を伺いたいのと、
砥石について少しお伺いしたい事がありますので、どうかご協力お願い致します。

さらに!来年に包丁業界の値上げが実施されます。酔心だけでは無く、堺全体、関全体、新潟全体
要するに、日本国内の包丁が値上げされます。何故??ですが、鉄の値段がグンっと上がったから
だそうで、鍛冶屋さんなどは、「何でやねん」っとぼやいていました。
包丁を造る素が値上げするので、それに沿って値段が上がります。
とある素材は現行価格の16%UPだとか・・・。それでも、まだ値上げしようとしているらしい・・・。
そのとある素材の包丁は、酔心では扱って無いので、ご安心を!

値上げのお陰で、エクセル(表計算)の嵐です。PCに向かいっぱなしで、目と腕から肩こりが・・・。
「青木君そんな頑張って値上げしなくてもいいんだよ・・・」っと言う声が聞こえて来そうな気がします(^^;

しかし、単に鉄の値段が上がったからとて、今までのと同じ包丁だったら何か寂しい!っと思ったので
取り合えず銀三綱辺りから、仕様を少し変えます。過去と現代?の違いを出して行こうと思ってますので
これからの酔心包丁にもご期待下さい。

蛸引の話やら、薄刃の話やら、色々な方向に飛びましたが、今回はこの辺りで!!





   

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