2004年3月期

酔心特集「洋包丁素材のお話」

前回の予告では、カスタマイズ其の五をお伝えする予定でしたが、説明画像等が間に合わず
頑張ってみたのですが、完璧では無いので、次回お送りする予定だった洋包丁素材について
特集します。素材の説明と共に、現在話題?主流になりつつある抗菌柄包丁についても少し
お話してみます。

洋包丁素材の王道INOX鋼

現在、洋包丁素材としてはINOX鋼(ステンレス系)がメインです。
INOX鋼というのは、要するにステンレス鋼になります。
*ステンレス=ステイン(汚れ)レス(・・の無い)の略式です!
しかし、ステンレスと言うと切れないイメージがあるので、INOX鋼と言う表示を各社
行っています。ヨーロッパではステンレスの事を、INOXと呼びます!
INOX鋼にはかなり種類があります。
海外産「スウェーデン」国産が刃物鋼材としてはほとんどです。
国産のINOX鋼もあります。国産に比べて海外の方が高価な素材になっています。

基本的に考えて値段が張るINOX鋼洋包丁は外国産でスェーデン系が多いです。
特徴は、取り合えず分子が細かい!和包丁で鍛冶屋さんが叩きまくって分子を
細かくしたりしますが、生まれながらにして細かい素材なのです。
当然細かいので細やかな刃が付き滑らかな切れ味を発生させます。
(これを叩けばもっと細かくなるのかな?? 興味ありますよね!)
酔心製品では、INOX本焼和包丁にスウェーデン産のINOX鋼を使用しています。

基礎情報[ステンレス鋼とは]
鉄に10.5%以上のクロムを含む鉄系合金をステンレス鋼といいます。
鉄にクロムを添加すると表面にち密で強固な酸化皮膜(保護皮膜)が作られ、鉄の欠点である
「さび」を防ぐ働きをします。この皮膜は何かの原因で傷つけられることがあっても、
すぐにステンレス中のクロムが周囲の酸素と結合して、自動的に再生されます。
このためステンレスの表面は、酸素の供給が妨げられない限り、常にこの皮膜によって保護されてい
る状態を保ちます。(愛知製鉄Webより抜粋)
国産のステンレス鋼は意外にも沢山あって、6A 8A 10Aなどがあります。


ホームセンターなどで売られている洋包丁(安価)は6−Aが多いと言われています。 
同じブランドで「見た目一緒やのに何が違うんや?」と言う場合は、素材が違う可能性があります。
初めの切れ味は多分一緒!どっちも良く切れますが、それが長持ち(長く切れる)か否かで価格が変わり
ます。安い物は一言で表現すると、硬い!メチャクチャ硬い。研ぐのはかなり困難です。
¥100均一の包丁を機械を使って研いでみましたが・・・。機械を使っても研げない。研げるけど
大変(汗)これは極端なランクの包丁ですが・・・。

それで、6−A⇒8−A⇒10−Aと数字が増えるにつれて炭素量が増えます。
炭素量が増える=硬くなる&サビ易くなる!事につながりますが、良く切れます。
「硬くなったら良く切れるけど、欠け易くなるんでは?」っと思いますが、その為にモリブデンと
言う材料が存在し、鋼に粘りを与えます。だからモリブデン鋼って言うのは名称じゃなくて、正確には
モリブデン配合の鋼っと言う事なんですね!!

*6Aが安価な包丁で・・・・っと書きましたが、上記の説明では6Aが硬くないんじゃ?っとなる
 かもしれませんが、続に言う焼きっぱなしで製造されます。硬くしただけで焼戻しによる粘りを
 出してない状態かもしれません。焼き戻しなどを行うと工程が増えるから原価も上がる!
 原価が上がると家庭では買い難い価格になってしまう!6Aもちゃんと加工してあげれば良い素材?

で!酔心洋包丁は、8Aのステンレスを使用しています。これは、ハッキリ言って中間な位置に
ランク付けされる素材です。和包丁で言うならば、白二鋼〜白三鋼かな?
「おい酔心!もっとエエの作れよ!」っと思うかも知れませんが、実はこの辺りの素材が最もバランス
が良いと考えています。今の世の中サビに強くなくてはダメ!しかし、堺の包丁屋としては、切れ味も
優先したい!このバランスが8Aのステンレスには有るのです。コスト的にも高価にならないですし
業務用として調理場で揃えるには最適なラインだと思っています。
10Aステンレスでは、手入れを怠るとサビが出易いと言う事もあります。調理場で使う人が全て
プロでは無い可能性もありますよね!例:パートのおばちゃんやバイトの学生など!

「バイトが使うんなら8A以下でもエエやん!」っと思うかも知れません!しかし、バイトが使っても
主婦のパートさんが使っても使用頻度はプロレベルであって、使用する人の生活性とは全く別物です。
ここが重要な点で、大きいレストランチェーンなどの仕入れをされてる方は要注意です。
変に安い包丁を買うと、買い替えが増える可能性があります。切れ止むのが早いかも!

しかし、最近のコダワリ街道まっしぐらの酔心!このままでは洋包丁を使用するシェフに最も良い物
をお届けできない!っと言う事で、既に開発に入っています。手入れがキチンと出来る本当のプロ向け
に、切れ味を重視し手入れを怠らなければサビは十分防げる素材で!
じっくり作っているのでしばらくお時間を頂きますが、完成次第WebにUPします。

ステンレスについて、もっと詳しく知りたい(化学的な配合など)方も居られるかと思いますが、
どう噛み砕いても、難しい表現になってしまい論文チックになるので、控えます。
上手く噛み砕いて例え話しが出来て、皆さんに解りやすく説明できる時が来たら特集で再アップします。
どうしても知りたい!っと言う方は、下記にリンクを設けましたので、そこに行って見て下さい。
また各包丁メーカーの製品が、どの素材なのかを知りたい場合はそのメーカーに問い合わせて下さい。
製鉄所のWebにはSUS304とかそんな品番しか載ってないので(^^;

日立精錬所 http://www.hitachi-metals.co.jp/
言わずと知れた和鉄の名産地、島根県安来地方で精錬される鋼。

大同製鋼 http://www.daido.co.jp/
新しい鋼などを多く開発していると、個人的に考える製鉄所。

愛知製鉄 http://www.aichi-steel.co.jp/
国産の洋包丁は80%ここの鉄ではないでしょうか?

サンドビック http://www.sandvik.com/jp/
スェーデン産のINOX鋼を持つ製鉄所。

他にも色々製鉄所などがあります。取り合えず4件へのリンクを貼りました。

洋包丁の殺菌について!
良く聞く話が、包丁殺菌の為に漂白剤(ハイタ‐等)に入れる方が居られるようですが、
これは包丁にも柄にも良く無い事です。
洋包丁柄は合板がほとんどで、何枚もの板を超強力接着剤で信じられない圧力で圧縮した物です。
黒柄は合板を黒く染めているので、漂白剤を使うと・・・白くなってくる!当たり前ですよね!
その上熱湯消毒やスチーム消毒を繰り返す事で、合板の結束力が落ちて柄が開いたりします。
包丁は、上記でも述べたようにサビに強い素材ですが、漂白剤などの塩素系や酸系の物で殺菌すると
流石のステンレスも耐えきれず錆びると言うよりは溶け出してしまいます。
ここで弱い部分が、柄の際です。業務用の洋包丁は、ツバが付いています。この部分は溶接している
ので、焼きが戻っていたりステンレスの分子構造が壊れていたりして弱くなっています。
塩素系で殺菌されて折れたなどのクレームの90%は、この部分から折れています。

右側の黒い点々は、包丁が溶けた跡です。
漂白された黒合板の柄。
この状態と上記画像の症状は一緒に起こります。
左写真の様に黒い線部分が組織の弱っている部分です。
溶接されたツバ付の場合は、メーカーを問わずこの症状が現れます。
某有名メーカーの洋包丁にはこの現象が起こりません!
理由は、ステンレスの素材にあります。クロームがタップリ入ってるからかな?
焼き入れが甘くHRC52程と聞いた事があります。鋭い切れ味を必要としない
場合、その包丁は大変な戦力?実力を持った包丁と言えます。

堺はどちらかと言うと、切れ味重視!更に長く切れる方向性があるので、
硬い包丁になるようです。


しかし、行政からの命令で何分170℃のスチームで殺菌!などと色々あるようですが、出来る事な
スチーム殺菌などに留めて、漂白剤などは使用しないようにお願いしたいです。
(注)和庖丁は約180℃〜220℃で焼きが戻る可能性があります。焼きが戻るとどうなるか!
  普通の鉄になってしまいます!硬さを失われるので鋭利な刃が付きませんので!!

警告!仮に漂白剤で殺菌した場合は、念入りに洗浄する必要があります。中途半端に洗って使用すると
漂白剤成分が残り、それが料理に付く可能性があります。大人なら薬品に耐えるかも知れませんが、
小さい子供などは一撃で・・・かも。最近の人間は弱いと思う!

抗菌包丁について!
最近の傾向で抗菌柄の包丁が良く出ています。それってどうなの?なんで抗菌なの?情報です。
そもそも、菌は絶対に居ます。まな板にも魚などの食材、布巾、手!それで包丁を握りますから、
絶対に包丁に菌は付きます。じゃあどう抗菌するんだ?っとなります。
抗菌理念は、柄に混ぜられた抗菌剤が、柄に付いた菌の細胞膜を破って菌としての機能を奪います。
もちろんこれによって、菌は増殖する事が出来なくなります。これが抗菌の本当の作用なんです。
こう言った柄は、プラスチック系の材料に抗菌剤を混ぜ込み形成します。
正確に表示するならば!細菌増殖抑制庖丁?
包丁柄抗菌剤「ポリアルファーBNの場合」

その他の抗菌剤や抗菌が得られる天然の抗菌剤としては、ヒノキやワサビなどがあります。
和包丁の柄にヒノキなんて面白そうですよね!問題もちょっとありますが・・・。

現在、私、達哉の脳みそには、新しい形状と素材で洋包丁構想が広がっています。
主に海外向け仕様になると思いますが、これが実現すれば、調理師さんの強力な武器になります。
発想は、ドンドン沸いてくるのですが、形にするのは大変ですねぇ〜〜!
でも、酔心だから出来る事を目指そうかと思います。 フフフ楽しみです。



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