2005年12月期

今年最後の特集ですが、更新がとっても遅くなりました。
皆様のおかげで大変忙しくさせて頂いております。

さて今回の特集は、効率良く研ぐ為には??っと言う記事です。
今回の効率は仕上げ砥石での研ぎを重点に考えてみました。

上(じょう)の刃付け職人さんは仕上げに天然砥石を使用されています。
その種類は色々ですが、基本的には硬めの天然砥石で刃先を撫でる
感じだと思ってください。 名倉を使用されている職人さんは少ないかと
思います。実際に使用されてるのを見た組み合せでは日照山+白名倉
か対馬砥の組み合わせです。
泥を使って・・・っと言うよりも面直し的に使いながらな雰囲気でした。


■効率良く、良い刃を得るために・・・。

時間があれば、ゆっくり研ぐのも良いでしょうが、誰だって素早く
良い刃を簡単に付けたいものです。あんまり簡単に付くと物足りなく
なるのかも知れませんが…(^^;

これまた、良い包丁(鋼材)になれば研ぐのが大変になります。
特に白二鋼や青二鋼などは、白三鋼に比べると硬く感じられたり、
ステンレス鋼になれば、粘りの為に研ぐのしんどく感じられたりする
かも知れません。硬い鋼材も続々出てきましたからねぇ〜〜。

最近は優秀な砥石が続々と開発されていて素早い研ぎが行えるように
なってきました。特に高硬度の鋼材に対しては、シャプトンさんの刃
の黒幕が一番人気で、ナニワさんの超セラ関係が後に続きます。
キングは、従来の信念を貫いているような印象です。
炭素鋼の包丁を使って居られる方は、一通り回って結局キングに戻って
くるようで、基準的な存在になっているのかも知れません。


そんなこんなで今回は現状の研ぎで効率UPを!です。

砥石そのもので研ぎ上げるのが一般的でしたが、酔心倶楽部会員様と
メールでやり取りしている中では、名倉との組み合わせで更に良い刃
を得ると言う事が流行って??います。(主に仕上げ砥での話!)
例えば、北山+木津山トモ名倉 北山+巣板などです。

北山+木津山トモ名倉 北山+巣板

この時の名倉効果は、刃を細かく付ける為かな?っと思っています。
天然砥石+天然名倉は王道ですが、この天然名倉を人造砥石を組み合
わせると、天然の細かさと人造砥石の細かさが上手い具合に融合して
良い切れ味になると思います。
天然砥石+天然名倉では得られない鋭さを生み出す事が出来ます。

研ぎには順番があり、中砥から仕上げ砥に移ります。
本当ならば、1000⇒3000⇒5000⇒8000⇒12000っと行けば最高でしょう。
そんな沢山砥石を買うわけにもいかないですが(^^; 
研ぎ目を消す作業には良いと思います。5000か8000で止まっても良いか
も知れません。12000までいくとマニアックな世界になるか、それほどの
切れ味を必要とする職場と言う事になると思います。
この細かさと切れ味、切り口の関係は実感して下さい!!!
ちょっとだけ言うと、刺身などでは味が変わる、見た目も変わる!!!

面白いと思う組み合わせを少々。

天草砥+北山

天草トラ砥+北山

青砥+北山(右写真の様な鎌砥がホームセンターで安く売ってます。)

大村砥+北山(面直し的に使用。)

日照山の巣板+北山

木津山トモ名倉+北山

反則(^^; 内曇砥石+北山

王道 中山マルカ+トモ名倉


皆さんは1000番(中砥)を持っていると思います。
この1000から8000に行きたい場合にも名倉が生きてきます。
上記に書いた、刃を細かくする事以外にも研削力を上げる効果があります。
8000番の上に木津山でもOKですし、早さを追求するならば、巣板を名倉と
して使用すれば、8000の砥石が5000にも3000にもなります。(感覚ですよ!)
この相性(組み合わせ)は色々と試してみて下さい。
確信がある組み合わせは北山+木津山かなぁ〜〜日々修行に色々書いていたと
思いますのでそちらを参照して頂くか実践的な面では切れる包丁選びさんで!

天然名倉は来年にちょっと面白いセットを考えていますのでお楽しみに!
全部トモ名倉系です。『えっ!これを名倉に??』みたいな(^^)

人造名倉も年末か来年かに発表です。取り合えず10個限定ですね。
1個は実験用にしたいので、実質9個の販売を予定しています。
サイズは180×50×25で色は白色! 販売価格は・・・・後日!


■研ぐ(研いだ)場所の確認!

研ぎが難しいと言われる方、思っている部分に上手く砥石が当らない方は
研いだ部分を毎回確認する事をお薦めします。
刃先から刃元まで研ぎ終えて(ワンストローク)から刃を見るのでは無くて
最初は、刃先をチョイチョイっと研いで裏返して何処が研げたかをチェックす
る習慣を付けると、良いと思います。
思ってる部分がちゃんと当ったか?!を確認する事で無駄な部分を研ぐ事が
少なくなるのと、自分が今何処を研いでいるのかを感じる事が出来ます。
刃先と刃元では、角度や肘の高さが若干変わります。
各個所どの角度で研げばこの部分が研げている言う事を覚えれば、面白いよう
に包丁を研ぎ上げる事ができます。

遠回りですが、この確認や自分の研いでいる場所を把握する事が出来れば自分
の好きな形へ向って研ぎを行える事が出来ると思います。
闇雲に研ぐのではなく、砥石と包丁の接地面を感じながら・・・・。

包丁に砥石を押しつけて研げば、何処を研いでいるか一目瞭然なんですが・・。
一回やってみましたが、止めた方が懸命です。
スチール棒の原理は和包丁には通用しませんし、洋包丁にしても同じ事・・・。
砥石に包丁を押しつけた方が微妙な力加減が出来るんですね!!

でも!!家庭用の砥石としてはそんな砥石が存在するんです!!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓これです。↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

             写真を取り忘れました。。【ママ砥石】と言う簡易砥石です。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑


■自分に合った研ぎを探そう!

100人居れば100通りの研ぎがあります。
「刃物はこう研げ!」みたいな基準があっても良いと思いますが、セオリー
に支配されない研ぎが良いと思います。特集で何通りか紹介しようかと思った
のですが、それよりも特性を紹介した方が広がりがあるかと思いましたので、
【こうやったら、こうなるでしょう。】的な事を書こうと思います。

良く切れるようにするには、刃の細かさと切り刃などの切り込み角を調節する
必要があります。 

刃の細かさとは、砥石の番手で、1000よりも12000の方が滑らかに切れます。
細かくなればなる程、食材を滑りながら切る感覚になってしまいます。
極端ですが、1000で仕上げた240mm柳刃で6cm幅の刺身を一引きで切れるとします。
12000で仕上げた場合270mm柳刃で引かなければ包丁なりに切れないと言う感じです。
作業効率を上げたい場合は12000よりも8000や6000の方が良いと言う場合もあります。
決して細かければ良いと言う事はありません。

今回特集した名倉の効果を使えば、これらが微妙に変化します。
12000の滑らかさを持った8000な感覚などです。
また鋼材の種類によっては、鋼材そのものが持つ特性も理解して番手を選ぶ事が重要
です。 マズは、自分の持っているメイン包丁の鋼材と砥石の相性を探してみて、
次ぎに名倉砥石へ発展するのが良いと思います。

切り刃の角度とは、読んで字の通りです(^^)
角度が鋭角(ゆるい)と鋭く切り込む事が可能です。しかし刃が弱くなるでしょう。
角度が鈍角(きつい)と切り込む力が失われて切り広げる力が増します。刃は厚いので
強いと言えるでしょう。 この鋭角と鈍角を組み合わせた物がハマグリ刃です。

切り刃の角度は、包丁の厚みとも関係してきます。
仮に、柳刃で鋭角を作ろうと思えば、シノギ筋をググっと上げてやります。
逆に、鈍角にしてやろうと思えば、シノギ筋を下げる事になります。
下げると言うよりは、切り刃内にシノギ筋をもう一つ作る感じですね。


次ぎに摩擦による切れ味低下への対処です。
鈍角にした場合、切り離す力が強いので摩擦による切れ味低下の影響は少ないと思い
ます。問題は鋭角にした場合の摩擦による切れ味低下への対処です。
ハマグリにしてしまえば良いのですが、それ以外の方法で!!例えば一枚刃で切れ味
を追求しながら、貼り付きにくい研ぎはあるのか??って事ですが。

一つ切る前に包丁を濡らしてから切る!
一つ鏡面にしない。

が最も簡単な方法です。包丁を濡らしてから切ると言うのは基本なのかもですが、
毎回毎回濡らしている(濡れ布巾で湿らせる)のも面倒なお話だと思います。
湿らせるにしても出来るだけ少ない方が良い!!
っとなると切り刃を鏡面に仕上げないのが一番です(^^)中砥の研ぎ目を残してやる
のが一番かと思います。刃先が鏡面風になってるのは良いと思いますが、切り刃は
多少なりとも霞を持たせて、細かい空間を作ってやる事が良いと思います。

この作り方は、角度を変えて研ぎ分けるだけです!
中砥の後に、刃先だけ仕上げ砥が当るように研げばOKです。
これが簡単に出来るように、上記に書いた研いだ後の確認が生きてきます。


包丁の形状を考える。

切っ先がコンコルドになっているのは論外と致しまして・・。
切っ先の刃幅を狭くしている寿司屋さんが結構いらっしゃいます。
「何でだ??」っと思う方も居れば、「そんなんこうやからやん!」
とおっしゃる方も居ると思います。

お寿司屋さんの調理師さんは器用で柳刃で何でもやってしまうようで、
ネタ引きや葱をきざむ、海苔巻を切るなど柳刃を使いこなしているそうです。
お寿司屋さんが持てば、柳刃は万能包丁となる!?

しかし、普通の柳刃ではそんな風には出来ません。
それ相応に研ぎが入っています。切っ先の刃幅が狭いのは海苔巻を切る時に
包丁に貼りつかない様に(抵抗が少ないように)狭くしているそうです。

外国の寿司屋さんでは、日本で考えられないような海苔巻が出ているようで、
海苔巻が主流とも聞いた事があります。それゆえに、筋引きなどの包丁が人気
だとか・・。海苔巻メインなら無理に柳刃で切るよりも筋引きのが早いですね!

出刃などでも、刃の付け方で色々な事に使えるかも知れません。
アゴ周辺を分厚くして、切っ先を薄く切り刃を広くすれば。。。1丁である程度
の仕事をこなせそうな気がします。 剛と柔の組み合わせですね!!

基本的な研ぎが、出来るようになったら是非形状を色々と考えてみて下さい。


■2005年のまとめ■

2005年も酔心特集を続けることが出来ました。
沢山のアクセスを頂き、また特集を参考に包丁や砥石を選んで頂けたりして
大変嬉しく思っております。 特集の内容がマニアック過ぎて解らないという意見
も頂いたり、もっともっと!!なご意見を求められたり嬉しくも悩める今年の特集
全般でした(^^; 少しずつ景気も上向いてきているようですし、ワンランク上の
レストラン、寿司屋さんを御客さんが求めているように感じられます。
今まで腕のある調理師さんが辛い思い(安いレストランや寿司屋さんに押されて)
をされてきたかも知れませんが、来年からは少々高くても美味しい物を!っと言う
お客さんが増えてきたように思います。 大阪のタクシー渋滞が無くなってるんです
から景気ちょっと良くなってますよね!!!

来年から酔心特集の更新を2ヶ月に1回か3ヶ月に1回に変更しようかと思っています。
包丁製作や新製品の創造、品質向上と安定を維持する事に従事したいと思っています。
それと、どうしてもやりたい事があるので、ご理解下さい。

2ヶ月に1回、3ヶ月に1回には理由があります。 (^〜^)b お楽しみに!!!
っと言いながら1ヶ月1回更新してたりして・・・(^^;黙ってたら良いのに言ってしまう性格
なのかも知れませんね・・・。 お人よしとも言われたりも・・・(^^;

通常の細かい特集ネタは、日々修行か、ブログ的な物でご紹介しようかと思います。


出荷は来年になりますが、ご要望が多かったので特集にて【鬼手仏心】の写真と
詳細を掲載します。 お電話を頂いたり、メールでの問い合わせが多かったので・・・。

僕個人が、出刃に良いと思われる柄とマチ磨加工、刃を守る鞘までをセットに
させて頂きました。これもオーダーメイドで柄の交換、サヤ無しも可能です。
価格もそれによって変わりますので、お問い合わせ下さい。



来年も酔心は止まる事なく、ドンドン色々な事を打ち出して行こうと思っておりますので
特集を始め、酔心製品も!よろしくお願い致します。


特集TOPへ