2005年5月期「炭素鋼洋包丁」

更新が大変遅くなりました。GWはいかがお過ごしだったでしょうか?
今年は4年に1回の食博覧会が大阪でありました。今年は行く事が
出来ませんでしたが、展示即売されている方からの追加注文が、
炭素鋼ばっかりだった事こから炭素鋼洋包丁について少し特集します。

酔心日本鋼(炭素系洋包丁)

■炭素鋼洋包丁■

どこのWebSiteを見ても最近めっきり炭素鋼の洋包丁が減りました。
根強い人気のあるシリーズもありますが、ステンレス系に押されて
減ってきています。不思議な事に無くなると欲しくなるものなのか
4年に一回のGWに行われる食博覧会では、炭素鋼の洋包丁が良く
売れていました。4年前は会場に数回顔を出したのですが、今回は
行く事が出来ませんでしたが、展示即売している方からの追加注文
は炭素鋼が圧倒的に多く、一般の方(家庭)が好んで炭素鋼を買う傾
向にあるようです。

現在炭素鋼が敬遠される原因は、錆びると言う事です。
正直な話、包丁の使い方を知っている方ならば、使用していくと食材
の油(肉&魚)の油が包丁に薄っすら乗って被膜を作って錆びを防ぐよ
うになってきます。(包丁本体が黒っぽくなる感じ!)
それと、キャベツなどを切り売りするスーパーのバックヤードでは、
炭素鋼を使用すると切り口が黒く?茶色くなってしまいます。
そう言った事から、炭素鋼が少しずつ減ってきました。
業務用として使用される場面が減ってきた為に廃版となってきたようです。

加工現場では無く、調理場で使用するとなると炭素鋼の洋包丁ほど良く切
れる物はありません。噛みつく様に切れ込んで行きます。
INOX鋼も良く切れますが、刃が10cmで5cm切れ込むならば、鋼は10cmで
7cm〜8cmくらい切れ込むような印象を持っています。
多分ハガネを構成する分子が違うからかも知れません。

この切れ方の違いは、包丁の長さにも関係します。
一発で切るならば、長い包丁の方が断然有効です。
しかし、調理場が狭い!取りまわしが悪い!などを考えると短い包丁
で、長い距離を切れる包丁が優秀な包丁とも考える事ができます。
もしかしたら、良く切れる包丁とは刃移動距離と切れ込みの比率かも・・!

INOX鋼が10:5ならば30cmだと15cm切れ込む事になります。
炭素鋼が10:8ならば30cmだと24cm切れ込む計算になります。
その差は9cmですが、これは大きいと思います。
(上の比率は感覚の話ですので、科学的根拠はありません!)
まあ、上の事を考えると一寸下の包丁を使える計算になります。
30cmを27cmで選べると言う事にもなります。
迎え包丁で使用するともっと長い距離を切る事が出来るかも知れません。

話は戻って、家庭で再び炭素鋼系に人気が集まると言う事は、狭い台所
で短い包丁で良く切れるからだと思っています。
包丁はやっぱり良く切れなきゃ!って言う感じでしょうか・・・。
それと、価格も安いと言う事でしょう。ステンレス系でも二万円以上に
なると鋼に近い良い切れ味が出るかも知れませんが家庭用としては一万
円以内か五千円前後が入手し易いのかも知れません。

更に、研ぎ易いと言う点があります。ステン系の包丁は、最終のバリ取り
に苦労するかも知れません。研ぎのなんたら〜と言う説明書きが包丁に
良く入っていますが、鋼の研ぎ方を書いている物が多く、それでもOKです
が、購入した時のような切れ味にならない場合が多いかもです。
その点、鋼系は説明書きなどを見れば殆どの場合切れ味が復活します。

家庭用としての説明はここまでで、本職用(仕事用)としてしようする場合
は、切れ味も必要ですが、長く切れる事も重要な事になります。
炭素鋼系の難点は、研いだら鉄の匂いがすると言う事!炭素系を研ぐ場
合は、仕事終わりに研いでおく必要があります。1日置けば匂いが消えます。
それ故に、仕事中に研ぐなんて言うのは良く無い事は分かりますよね?
食材に匂いが付く可能性があります。
糸引き刃程度ならば、大丈夫かも知れませんが泥を出しまくって研ぐのは
止めた方が良いでしょう・・・。

長く切れる炭素系洋包丁を探すならば、青二鋼の洋包丁を買う事でクリア
できます。(酔心では取り扱いしていません!)和牛刀なら製作可能!
ちょっと甘くなるかも知れませんが、絶対的に長く切れます。
しかし、ステンレス系の方が長く切れるとは思います。
刃物に使用されている高級ステンレス鋼材は、良く切れて長く切れるように
人間が鋼材に混ぜ物をして出来た物なので当然と言えば当然です。

酔心では、この先新しく炭素鋼系の洋包丁を製作する事はマズありません。
仮に製作したとしても、和牛刀関係で製作する方向になると思います。
和牛刀関係ならば、青二鋼、白二鋼、銀三綱などでも製作できますし、形状
や厚みなども色々と触れるので、こだわりの人向けかも知れません。

鍔あり(溶接)と鍔無しの違い
本職用としては、殆どが鍔が付いています。
この鍔の意味は、重量感と剛性を高める為と、包丁を伝って柄の中にゴミや
水が入りにくくする為です。炭素鋼系の洋包丁は中子も、もちろん錆びます。
錆びてくると、錆びが湧いてきて木柄が押されて外れたりします。
変な話、鍔と木柄の間が腐敗して折れたりする事もあります。
これは、切れ味関係無く耐久性?を上げる為に重要なことです。

溶接している鍔の部分です。包丁を伝って柄に水や食材カス
が入るのを防いでいます。メンテナンス重視でしょうか!
大抵の洋包丁はこのような仕上げになっています。

切れ味を追求すれば、鍔無しの方が良いと思います。
理由は、溶接する為に包丁本体の硬度を落としたりします。折れ防止!
これは製造的に仕方が無い事です。それと厚く仕上げる事もあります。
薄いと溶接の時に穴が開く可能性があります。量産するには神経を使って
いては効率が悪いですし・・・。時間を掛ければ価格が上がりますしね〜。
鍔無しの場合は硬度を上げて薄く仕上る事が出来るので良く切れると思います。
しかし、水やゴミが入るので注意は必要ですね!
綺麗に洗って乾燥させれば問題ないかも知れません。
しかし、乾燥機に入れると木柄が割れる可能性もあるので難しいです。

良く見かけるのが、柄で包丁を挟んである包丁です。
切れ味にこだわるメーカーはこの方法を選んでいます。ステンレス系で言えば、
岐阜県の・・・っと言うメーカーはこの方法で良く切れる洋包丁を製作しています。
僕個人としては、切れ味を追求したいのでこちらを支持したいのですが、やっぱり
これはこれで難点が色々あるようです。(御客さんから聞いた話ですので・・・。)
この包丁は、鍔が付いていますが溶接していません。炭素鋼系は溶接してあった
かなぁ?カタログを見てみると・・・溶接してありますねぇ・・。やっぱり炭素系は
溶接が良いかも知れません。

包丁を柄で挟んである系の鍔です。最初は綺麗なんですが、
使用期間が長くなると、この小さい隙間に錆びが浮いてきます。
マメに磨いていれば大丈夫かなぁ?家にあったのは錆びてまし
た。母親のメンテナンスに問題あり??
この角にゴミが溜まります。爪楊枝とかでコシコシすれば取れる
かも知れませんが・・・。どうなんでしょう?どう思います?
この様な包丁の方が硬く焼きを入れる事が出来るので、良く切
れるとは思います。メンテナンス次第かなぁ?

注意:安い包丁はコストを落とす為に、鍔をつけたりしません。
    単に合板で包丁を挟んでるだけです。値段を見れば。。解って頂けると・・。
    これが溶接して無いから良く切れるとか思わないで下さいね(^^;

これも挟んでありますが、完全家庭用の包丁です。
製作工程が少ないので安くなります。炭素系の家庭用包丁
でこのような柄付けであれば、手入れを怠った場合1年か
2年で任務をまっとうする事になりそうですね!



■炭素鋼系洋包丁の選び方■
「洋包丁って機械で刃付けしたりするから全部一緒なんでしょ?」
まあそうなんです!和包丁ほど目を凝らして見る必要は無いかもですね!
しかしながら、洋包丁にも歪み取りだなんだかんだ色々あります。
ブレードが凹んでいる物も希に存在しますし、溶接が綺麗に出来ていないと
そこから錆びが進行したり。。。歪みが取れていないと曲がっていたり、
洋包丁で一番ヤッカイなのが、焼き入れの時に包丁が下を向く事!
今回その写真を撮りたかったのですが、下を向いた包丁が無かったので!

(←ここ)の部分が溶接でおかしくなってる部分です。
炭素系の場合ここから錆びが進行し折れたりします。
横から見ても解らない場合もありますし、写真のように
上から見て解る物もあります。こんな包丁は良く無いです。
長く使うなら止めておきましょう!
他の場合は、@とAの部分もチェックして下さい。
@の方は大丈夫な部類ですが、ここが酷いとココから錆びが
進行して折れたりします。良く柄と包丁が取れた!っと言うの
はここが悪いからです。返品交換の対象にはなるのかな?
使っている年数とかによって左右されるかもです。
色々クレームを言う必要が無いように選んでください。
酔心では、一番上の写真の様な包丁はOUTにしています。

■炭素鋼系に良い研石■
酔心特集をご覧になって居られる方ならばご存知かと思いますが、細かい砥石
で研ぐと滑ります。理由は、硬度が低い為です。
炭素鋼和牛刀バージョンならば、少々細かい砥石で研いでも問題無いかも知れ
ませんが、溶接してある系の炭素鋼系の洋包丁は細かい砥石で研ぐと、滑り出
しますのでご注意。#3000くらいから#8000くらいが限界かも知れません。
#8000だと確実に滑る感覚が出てくると思います。
炭素鋼系は錆びるので砥石の種類にも注意が必要です。
セラミック砥石などは、塩分を含んでいるので研ぎ後に綺麗に洗わないと錆びて
きます。研いでいる最中でも錆びが出る可能性もありますので注意が必要です。

当り障り無い砥石はキングのS−1がお薦めです。番手は#6000です。
これは、焼いている砥石ですので、セラミックのように錆びに対して神経質にな
らなくても良いかも知れません。錆びを促進させるような感じはあまり受けません。

炭素鋼系の洋包丁は研ぎ易いので、ハマグリ刃なども付け易く研ぎ入門?にも
最適だと思います。今だ炭素鋼系をご使用になられた事の無い方ならば、一度
使用して頂くとステンレス鋼の見え方が少し変わると思います。


■保管方法■
黒い錆びが出ていれば、水分を綺麗に拭き取って乾燥した場所に保管すれば
良いと思います。完全に乾燥させようと思えば、熱湯を掛けたら良いかも知れま
せんが、チンチンに湧いた熱湯は止めた方が良いかも知れません。
一応焼戻し温度が150℃〜220℃が炭素鋼系の温度ですので、100℃熱湯
ならば良いかも知れませんが・・・。
ついでにステン系は安い物だと焼戻し温度が100℃〜の物があるので注意!

ピカピカの状態で保管したい人は、使用後にクレンザーとかで磨いて油を軽く
塗っておくと良いでしょう。バフ目(縦に入ってる線)が少なくなれば油は必要
ないかも知れませんが・・・。鏡面にしたら張り付くし〜!半鏡面が良いかな?


炭素鋼系の洋包丁は良く切れるので、切れ味を求める方は上記の事を実践
して、是非ご使用下さい。ステンレス系しか使った事が無いなら炭素鋼の切れ味
はビックリするくらいの切れ味ですよ!メンテナンスに戸惑うかも知れませんが、
日本の鋼の切れ味を味わって下さい。たぶんこれからドンドン減ってきますから。

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