秋も深まり秋刀魚が美味しい季節になりました。実は魚の小骨が喉に刺さりやすい
僕としては、焼き魚を食べるのに苦労するのですが・・・(^^;
今度会社から骨抜きをGetして骨を抜いて、ガツガツ食べたいと思います。
さて今月の特集は包丁未来予想と本焼関連のお話です。
色んな方向へ飛んでいますが。。僕の中で本焼の意味がハッキリしたと思います。
◆包丁未来予想!◆
これからの包丁は、どうゆう方向へ進むのか?気になります。
今までの経歴では、炭素鋼からステンレス鋼へ以降しつつあります。
包丁本体の形状は、伝統的な形状を保っています。
和包丁に関しては柄の形状もデザインも大きく変更される事なく、
過去の歴史を保つように現状維持されています。
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右が日本鋼+黒合板柄 中央がINOX鋼+(茶合板) 左がINOX鋼+PC柄 |
例外としては、酔心INOX本焼和包丁のリミテッドエディションや洋包丁の柄を
付けた和包丁、プラスチック柄に材料を変更した物があります。
しかし、これが主流になるような事は無いと思います・・・。
和包丁に関しては、伝統的な物なのでビックリするような事は起こらない
と個人的に思っています。もしも、包丁の形状や仕様が大きく変わる事
があるならば、日本料理の文化が大きく変わると言う事になりそうです。
包丁形状や柄形状が大きく変わらないとなるならば、鋼材が進化する
可能性があると思います。前に記したように、炭素鋼からステンレス鋼へ
以降してきました。 研ぎにくい、切れないと言われたステンレス鋼が、
炭素鋼により近い切れ味が出るようになり、炭素鋼よりも少し切れ味が
劣ると言いながらも、一回ステン系を使うと「たまらん〜」っとなるようです。
この「たまらん」は手入れの簡単さと言う点です!
ってな感じで鋼材メーカーの研究と努力の成果で、サビに強く良く切れる
鋼材が色々と開発されてきました。
これから、まだまだ良い鋼材を製作できる可能性があると思います。
皆さんが、どんな鋼材が理想かを考えてみるのも面白いかも知れません。
もしかすると、ステンレス系から炭素鋼系へ再び戻ってくるかもです。
歴史は繰り返されるような気がしています。
鋼の包丁で育った調理師さんが、ステンレス鋼の研ぎに戸惑うように、
その逆で、これからステンレス鋼の包丁で育つ調理師さんが将来、炭素鋼
の研ぎなどに戸惑いそうな・・・。
和包丁に関しての未来予想は今の所、こんな感じでしょう。
皆さんは、どのように変化すると思いますか?!
では、進化の激しい洋包丁はどうでしょうか?
洋包丁に使用される鋼材も色々ありますが、ほとんどがステン系になってきました。
炭素鋼の洋包丁を探す方が少し難しい時代になりつつあるかも知れません。
現在あるステンレス鋼材で、十分な切れ味を出せていると思います。
洋包丁の形状もある程度確立されていて、各メーカー良く似た形状をしています。
唯一変化があるとするならば、柄の形状と、ブレードに付けられたティンプルでしょう。
これまた個人的な見解ですが、洋包丁は格好良い方が良いと思っています。
その格好良いと言う事は、使用感が良いと言う方向へつながると思うのです。
押し切りと言う点から考えると、アレをこうして、こうやってっと考えて柄を作る事が
必要で、これから進化する余地は存分にあるでしょう。これは形状や角度です!
これまで柄の素材としては、合板柄が主流でした。
しかし、最近の洋包丁は食器洗浄機に入れられ高温で乾燥殺菌を受け、消毒液
に浸されてしまう感じになっています。これでは合板は耐えれません・・・。
大手メーカーでは、抗菌PC柄ハンドルが最も主流となっています。
手の馴染みから考えると、木製の方が断然良いのですが、衛生上の問題もアリ・・。
これからの洋包丁は、抗菌作用と柄の改良による使用感の向上にあるかもデス。
日々特集で、外国のフォーラムに参加!っと書きましたがシアトルのエクゼティブ
から、某有名メーカーに依頼を受けて包丁デザインを行っているとのメッセージが
きました。しかも図面の写真付きで(^^; 企業秘密ではないのか??
あるメーカーの柄に近く、あるメーカーのブレードに近い包丁のようで・・・。
見た目は凄い格好が良いですが、現実的に量産できるのか??
「何か意見を下さい!」っと言われましたが・・・僕が情報提供をしても良いものやら。
外国では洋包丁の柄は木製の方が人気がありそうな雰囲気ですね!
◆和包丁、洋包丁総合的に考えるこれからの包丁選び!◆
酔心特集で良い包丁の選び方を数回紹介していますが、それとは別で。
くどいようですが、刃物鋼材と砥石との相性は絶対的な感じで、切って切れない
関係です。これからは、刃物鋼材と相性の良い砥石をセットで販売して行く事が
重要であると共に、その包丁の研ぎ方や特性をしっかり説明する必要があると
感じています。 良く切れる、サビに強い。。。っとだけ言われても・・・・。
鋼の包丁は、研げばある程度切れますが、ステンレス系に関しては別の観点で
研ぎを入れないと鋼材本来の実力を存分に発揮する事が出来ません!
それに、まな板との相性です。総合的に考えて、包丁を選んでいくのが良いと思います。
酔心研究所で、色々と実験してきたので相性などの蓄積は出来てきました。
包丁、砥石に関してトータルにご紹介するのも良いかも知れません。
和包丁に関しては、この包丁(1丁)には、この砥石が合う!と言う1:1の案内があれば
色々考えずに?良い物を提供できるかと思います。しかし、色々考える事が好きな人
には、余計な事をしないで・・・っとなりそうな(^^;
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INOX本焼和包丁と専用仕上げ砥石
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◆白一鋼水本焼◆
オーダーメイドで白一鋼水本焼を製作しました。
これは、非常に長い企画で今年の真冬に包丁を打ち、しばらく寝かせて刃を付けると
言う最良の方法で製作させて頂きました。
今回のオーダーメイドは、刀剣も打てる鍛冶屋さんにお願いし、刃付けも堺でも腕の良い
刃付屋さんに。柄は青身の朴で、通常の朴よりも強く手に馴染む、しっくり硬い物を選び
ました。包丁は一発で良い物が出来たのですが、柄の方は水牛の色やバランスなどを
考えて、10数本の中から1本を選び抜き柄付けをしました。
プレゼントされる包丁と言う事で出来る事思う事の全てを費やした逸品です。
(こういう包丁は売りたく無くなるんですね・・・)
さて、実際に使用してどのような評価を頂けるのか!
包丁は研いで使って始めて良し悪しが解るので、お客さんの手元に入ってからが勝負?
っと言うか、本当の評価がされると思います。
白一鋼は、玉鋼に最も近い材料で炭素量が多く不純物が少ない鋼材です。
製作するには、不純物が入ってる方が焼き入れし易くなります。
青二鋼などは、色々物を混ぜているので焼き入れがし易いと言う製造側のメリットも
ありますが、鍛接時の温度管理が非常に難しいと言う点もあります。
白一鋼の難しい所は、焼き入れ時の温度です。
適温で焼き入れをしないと、焼きムラができてしまい、裏側にポンポンっと雲が出来ます。
この雲部分には炭素が無いと言ってよいのか・・硬くなっていないと言ってよいのか・・。
その部分が甘くなります。特に水本焼で綺麗に焼き入れするのは難しく、この雲を無視
すれば、白一鋼を打つ職人さんは一気に増えます(^^;
ある方法を使えば、白一鋼に裏クモを出さないように出来ますが、鋼には良くないかも・・。
■何故に、白一鋼水本焼が鋭く切れるのかの見解。■
簡単に想像できるのは、炭素量が多いから硬いから鋭い!
混ぜ物が少ないピュアな鋼材だから、滑る感覚が無く噛み付くような切れ味になる。
っと言う点が考えられます。 たぶんそうだと思います(^^)
しかし白一鋼の水本焼が一番鋭く切れると言うのには他にも理由があると考えています。
白一鋼の鋼材が良く切れるならば、鍛造の包丁でも本焼同等に良く切れるハズだと。。。
この見解は、本焼と鍛造包丁の区別にも繋がるかも知れません!!
本焼は、一枚の鋼材を赤めて叩いて伸ばしてを何回も繰り返します。
先月号の銀三鋼本焼ストーリーにもあるように、非常に大変で時間の必要な作業です。
特集で何回も言ってきたように、温度を上げると鋼が痛みます。
温度を上げないで、ゆっくりゆっくり包丁の形状、厚みにしていきます。
鍛造包丁に対して倍の鋼を使用していますから、高温にしない限り、形状を作るのに倍
の時間と倍の鍛錬が必要になります。そうなると!鋼が詰まって(締まって)きます。
だから!本焼き全般は良く切れるとか、長く切れるとか言われているのだと思います。
白一鋼はそんな本焼の中でも一番素直で切ると言う事のスペシャリスト的な鋼材だと
思って頂ければ良いかも知れません。だた、切る為に・・・。
それに色々付け加える(長く切れる、サビに強い)などを考えると機能的な鋼材だと!
■水焼の効果■
堺の本焼は水焼しかない。と言われていますが、そうでも無さそうです。
油で焼く鍛冶屋さんも居るようで・・・。素材に合わせて焼き入れを変えているようです。
ちなみに、油で焼くと粘りが出ると言いましょうか、ゆっくり冷えるのでまったりします。
切れ味もまったりすると思いますが、折れたり欠けにくかったりするメリットもありそうで・・。
しかし、本焼は水焼でキワドイ包丁を流麗に使いこなしたいし、本焼ならば水焼きで!
っと言うのがあると思います。
水焼の効果は、急冷にあります。一気に冷やす事で鋼が硬くなり鋭い切れ味が出せる
要因になります。後は、焼き戻しなどで適度に粘りを出します。
この時に包丁に塗る泥の配合や塗る厚みによって波紋の現れ方が変わったり、上手く
焼きが入ったり、焼き入れの時点で折れたり割れたり・・・。
折れたり、割れたりした時点で全てが終わりですが、水焼にはそれなりの魅力があります。
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裏刻印に「水」の文字が!水焼の証です。 |
◆叩く事、硬く焼き入れする事、焼戻しをする事◆
水本焼が良く切れると言う事は、
1.叩いて作る事(叩く事で鋼が締まり、分子が砕かれ鋼自体が粘りを出す。)
2.水焼で急冷却する事による硬度の確保
3.適度な焼戻しによる粘り(鋼の特性を利用)
この3つの点が上手く重なる事で、硬く粘りがあり滑らかな切れ味が長く続く包丁になると
考える事ができます。
板鋼を型で包丁の形に抜いた場合は、1の叩いて作るが無くなります。
油で焼いた場合は2が無くなります。
焼戻しが上手くできていないと、研ぎにくい硬い包丁になります。良く切れるけど衝撃に弱い?
この点を考えると、土井さんが打つ鍛接の包丁は本焼により近い包丁と言えます。
昔は、全て土井さんのような製法で造られていたのだと思いますが・・・。
◆本焼にある波紋(刃紋)について◆
本焼と言えども、研ぎ屋が水砥で砥げば歪みが出ます。
全てが鋼で出来ている本焼包丁は、修正棒(写真参照)などで歪みを取る事は出来ません。
タガネを打って修正するのですが、この時に波紋の部分が生きてきます。
波紋に見えている部分(霞んでいる部分)は焼が甘くなっているので霞んでいます。
(中砥で霞包丁を研ぐと軟鉄が霞み鋼部分はそんなに霞みませんよね!鋼材の硬度の差
によって砥石の乗り具合なんかが違うので霞みます。硬い鋼は霞みません!!)
この焼が甘い部分で上手く歪みを取ったり、多少の衝撃に対応している感じでしょうか。
キンキンに張った本焼で唯一の柔軟性がある部分です!
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白二鋼水本焼 |
青二鋼水本焼 |
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青二鋼水本焼(裏) |
青二鋼水本焼(個人所有) |
■個人所有の本焼は、平の部分に波紋があります。見えますか?
■磨いたり研いだりしてるので模様が薄くなってしまってます(^^;
■これはフグ引で格好良い柄が付いています!今の所実戦投入の可能性は薄いです(@@)
波紋が、平にあったり、シノギ筋の上にあったり、切り刃にあったり、色々な本焼があります。
泥を塗る部分場所によって、それが決ります。包丁全体に泥を塗り、波紋を出したい部分に
は厚く泥を塗ります。(厚い部分では2mmくらいあったかな?写真を撮っておけばよかった・・。
包丁に銘を入れたい場合は、シノギ筋あたりに波紋があるのが最適です。
銘を入れるにはタガネと金鎚でコンコン入れていきます。この時、波紋よりも上の部分にしか
入れる事が出来ません! 最近はハイスのタガネなどがあるので、硬さ的には勝てるかも
知れませんが、硬い部分に銘を入れるほどきつくタガネを入れると歪む、割れる可能性が
あるからです。
ちなみに、この波紋部分に刃先が来るまで研ぎこめば、その包丁は終わりとされています。
波紋が、切り刃にある場合は実際に包丁として使用出来る部分は包丁の3分1しか無いかも
知れません。 昔は、本焼と言えば切り刃らへんに波紋があったそうです。
とにかく良く割れたそうで・・冬の寒い日は自宅のコタツで包丁を温めて問屋さん納めるようで
問屋で割れたらワシは知らん〜〜っと言ったようです(^^;
そう考えると、最近の本焼は会社で割れたりしない!職人さんの技術が上がったのか?
それとも鋼材が昔から変わったのか?泥の配合が良いのか?
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INOX鋼本焼和包丁の折れた写真です。粘りのあるINOXと言えども
一点に集中的にタガネなどの衝撃を与えると折れます。
折れ口にキズが無かったので、割れたと言う表現が正しいかも! |
今回は、包丁の未来予想を少し考えてみました。
10年20年先にはどんな包丁が出まわっているのかなぁ?
個性溢れる柄の形状?鋼材の改良? 個人的にはアイデアはメチャクチャ溢れて現物に
するのには少し時間が必要かも知れません。しかし、色々な工具を揃えている最中でそれが
揃えば、TatsuyaAokiカスタムな包丁(柄や鞘)を製作してみようと思っています。
それと、今回オーダーメイドで白一鋼水本焼を製作させて頂いた時に得た情報や個人的観測
を色々を書いてみました。日々特集で本焼に付いて考えてみましょう〜っと書いていたのです
が、3通のメールを頂きました。色々な見解があるのだと思いました。
本当ならば、研究機関で本焼をしっかり叩いて伸ばすから分子が細かくなって・・・っと言うのを
科学的に実証すれば良いかも知れません。そうすれば、決定的な答えが出るかもです。
今の所、学会で発表できるような決定的な答えは無いので、皆さんなりの見解で色々考えて
みてください。酔心の青木達哉は、本焼が長く良く切れる要因は上記の事だろうと言う一つの
見解です。
そうそう、酔心夢工房研究所での叩いた包丁叩かない包丁の実験を早くしないとです。
お願いしている職人さんがメチャクチャ忙しいようで。。。渡して研いで下さい!なら良いのです
がもっとも面白く紹介したいので、しばらくお待ち下さい。
■最後にちょっと営業■
黒檀盛箸は丸いんです。転がるんです。八角の盛箸ありませんか?
の要望に答えて、黒檀八角水牛柄の盛箸をご用意しました。
これまで八角と言えばオールステンの盛箸でした。 どうでしょう?黒檀八角の盛箸は!
鞘もあったらなぁ〜っと思い作ってみました。
サイズは150mmと180mmをご用意。鞘は180mmのみになります。
えっ黒檀鞘・・・。作れますけど・・・高価になります(^^; 朴で(^^)b
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