2002年5月期

 

 包丁の女房!砥石について!

 
早いものでもう5月です。5月と言えばゴールデンウィーク!(^^)/
今年のゴールデンウイークは皆さんはどのように過ごしましたか?
僕は、これでもか!と言う程釣りに行きました。
琵琶湖で3〜4日泊まりこんで釣り三昧!しかし10年振りにコケで膝を思いっきり強打して
擦りむいてしました! でもなんだか楽しかったです。

 さて、今月は、砥石です。包丁を扱う上で絶対必要なのが砥石です。
前々から幾度と無く言っているように、「和包丁は研いでこそ本来の機能を発揮する!」です。
そんな事で、じゃ!一体砥石って何がいいの?荒砥、中砥、仕上げ砥の意味は?天然、人造、の差と現状は?
なんて事を掘り下げてみましょう! 今回は堺刃物伝統工芸師の方の絶大なるアドバイスの元で本職で使用する
砥石、お客さんが研ぐ時に必要な砥石などを特集してみます。


砥石の役割

 
砥石の役割は、ご存知の通り刃物に刃を付ける道具です。
研ぐ作業を簡単に申し上げると砥石の面と、包丁の刃を擦り合わせる事によって、刃が削られて
刃が付きます。
 日本では水砥石を主に使用します。砥石と水で包丁を研ぐわけですが、この作業を行うと、砥石
の面から古い砥石の粒が剥がれ落ちて新しい面が続々出てきて研ぐ力が続きます。
しかも、この研いで出た黒い汁も剥がれ落ちた砥石の粒なので、研磨力があります。
効率良く研ぐには砥石の黒い汁も役に立つんですね!
注)硬い砥石は中々減らない代わりに目詰りをすぐ起こします。
   これは砥石が硬い為に中々砥石が減らなくて砥石の目が詰まります。(経験ありますか?)


 荒砥、中砥、仕上げ砥について!

 荒、中、仕上げ、と大きく分けて3種類があるのですが、その役割にと特性についてです。
下記の情報は人造砥石の世間一般的な情報ですので、あまり深く考えすぎないで下さい。

種類 粒度(標準的指数) 使用目的 価格帯(標準価格)
荒砥石 #120〜#400 刃が欠けたり大きく変形した時に使用します。 ¥1200〜¥5000
中砥石 #600〜#1500  通常の刃付けや新品の包丁を刃付けする時に使用します。基本的な砥石です。 ¥2000〜¥7000
仕上げ砥石 #4000〜#10000 中砥で刃付けした後、更に鋭利な刃を付けるのに使用します。 ¥3000〜¥10000

 

各種砥石で研いだ後の刃の状態。

荒砥石で研ぐと 中砥石で研ぐと 仕上げ砥石で研ぐと

 


天然砥石と人造砥石の違い!

天然砥石について!

 さて、天然砥石のお話です。現在ハッキリ言って需要がありません!これは、包丁研ぎをこなせる料理人が
減ったのと、人造の方がより精度の高い粒子の砥石を作れるに他なりません。
(精度の高い粒子!天然の場合ムラがある為に安定した物を出す事が出来ない、人造は粒子を管理出来る!)
天然砥石は価格として20万円50万円などと言う値段がつきます。(本当に良い大きい砥石です!)

天然砥石の魅力とは? 

 天然砥石の構造から申し上げますと、何万年前(かなり昔ですね!)に生存していた微生物などの死骸が
海の底に溜まって固まった物です。それが何万年も掛けて隆起して山などにヒョッコリ顔を出した物なのです。
化石チックな物ですね!しかし最近は掘る人が減ったのと人造砥石の安価に負けています。

@希少価値がある。
A天然粒子の為仕上がりがより細かく仕上がり、落ち着いた仕上がりになる。しっとり光る!(分かりますか?)

この上記2点が天然砥石の魅力でしょう!特に包丁を研ぐ観念から言うとAはとても魅力的です。
@に関しては持つ者の心を魅了する事になるかも知れません。


人造砥石(合成砥石)について!

 天然の魅力はご理解頂けたでしょうか?現在使用されている砥石はほぼ人造です。理由は安いのと
安定した商品が手軽に入手できるって事です。しかも人が良い様に造り上げた物なので、成分も自由に
コントロールする事が可能なのも人造砥石です。天然と研磨力を比べると、人造の方が効率良く研磨する
事が出来ます。 

人造の魅力とは?

 人造の場合粒子が一定で安定した、マズ間違いの無い商品を安く購入出来る事です。
色々な成分を混ぜ合わせたりして、より研磨力の高い物が製造できます。

@安価である。
A安定した商品を購入できる。
Bある程度簡単に手に入る。
C研磨力が高い。
D種類が豊富!

この上記5点が人造砥石の魅力でしょう!こうやって比べてみても人造の方が魅力的な部分が多いです。
安価なのも魅力ですが、包丁と研ぐとなると、安定した商品が手に入るのが一番の魅力ではないでしょうか!


青木達哉個人的見解

 
色々調べてみて分かった事があって砥石も奥が深い事が分かりました。
最近でも天然砥石支持者は多く存在するようで、砥石屋さんが展示会で出展したら売れるようです。
しかしながら需要としては人造が遥かに上回っています。上記に書いたそれぞれの魅力の差が理由なのでしょう。
「包丁は切れるように研げたらエエんや!」と言う人も居ますし、「包丁は命のつぎに大切な物、綺麗に扱いたい」
と言う人も居ます。それぞれがそれ相応に合った砥石を使う事を僕は勧めます。

効率良く研ぐなら人造砥石。ゆっくり研いでしっとりした物にしたければ天然砥石。こだわりの世界です。(包丁もそう)
もしも僕が料理人で沢山の料理を毎日出す店で働いていれば、効率良く研げる人造を選びます。
もしも僕が料理人で一日に3組のお客さんを相手に、目の前で調理する店で働いていれば天然砥石を選びます。
もしも僕が料理人で包丁を上記両方の思いがあれば、中砥は人造、仕上げ天然にします。

それぞれに親方が居て、それぞれに教えがあるとは思いますが、個人の個性(今回は砥石)を生かす事が、
マダ見ぬ料理や味を出す事になるかも知れません。(ちょっと偉そうな事言ってしまいました・・・。)

包丁もそうなのですが、自分にあった物を使用する事が一番だと思います。今回それぞれの魅力を紹介させて
頂きました。是非参考にして頂いて、自分の包丁に合う良い砥石を見つけてください。


希少価値の高い天然砥石の概要を下記表に記載します。(参考&知識に!)
種類 名称
(産地)
品質 用途 備考
粒子 硬さ
 
荒砥 平島砥
(長崎県)
薄褐色 荒目 鎌ナタ包丁 荒研用 笹口砥
(別銘柄)
大村砥
(和歌山県)
薄褐色 中荒目 鎌ナタ包丁 荒研用 目透砥
(別銘柄)
砥面磨き用
中砥 天草砥
(熊本県)
褐色 中目 中硬 鎌ナタ包丁 中研用 備水砥
(特殊名称)
白褐色 仕上用
対馬砥
(長崎県)
黒色 細目 中硬 鎌ナタ包丁 中研ぎ用 黒名倉
(別名称)
仕上用
才切型 砥面仕上用
三河名倉砥
(愛知県)
白色 細目 刀剣 中研用 細名倉
(特殊銘柄)
鎌ナタ包丁 中研用
仕上用
茶色 才切型 金銀磨用
砥面仕上用
青砥
(京都府)
濃褐色 細目 カンナ、ノミ 中研用 門前砥
(特殊銘柄)
薄茶色 中硬 鎌ナタ包丁 仕上用 佐伯砥
(特殊銘柄)
仕上砥 合砥
(京都府)
卵黄色 極細目
中硬
カンナ、ノミ、メス
鎌ナタ包丁
仕上用 巣板
(特殊銘柄)
淡青色
灰白色
浅黄色 極細目 剃刀 仕上用 からす
(特殊銘柄)
濃灰色 刀剣 地艶 磨き用
濃灰色 剃刀 仕上用
褐色 極細目 中硬 刀剣 地研ぎ仕上用 内曇砥
刃研ぎ仕上用
刃艶磨き用
油砥 アルカンサス砥 白色 細目 極硬 理容用品 仕上用 輸入品
褐色 医療用品
半光沢 製図用具

現在産出していない天然砥石
伊予砥(愛知県) 丹馬砥(兵庫県) 浄慶寺砥(福井県) 
沼田砥(群馬県) 会津砥(福島県) 青  砥(栃木県)


ポイント!
天然砥石で合砥ってのがありますが、何故「合砥」と言うか知ってますか?
合砥を使用する時に「名倉砥石」で砥面を擦りぬめりを出してから研ぐからだそうです。
砥石を合わせる!って所からそう呼ばれてるそうです。←松永砥石の営業マンの言葉!

2002.5.21特集追加情報」 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

天然砥石と合成砥石の分子の話!

UPしてから新しい情報をGet!上記に書いたように、天然と合成の光り方の差を紹介しましたが、
その謎が解けました!合成砥石は分子が揃っている為に規則的に研げます。なので、光りが均一
に反射してキツイ反射をおこし、鏡の様な輝きを放ちます。
逆に天然砥石は分子がバラバラの状態にある為に規則的には研げず不規則な反射を起こします。
見た事がある方は分かるでしょうが、「奥行きのある鏡、深い映り方をする鏡」と同じ事なのです。

天然砥粒子
(不規則的)
合成砥粒子
(規則的)

この図はイメージ図ですので必ずこうだ!と言う保証はありません!

上記の説明では解りにくい?ので、現在頻繁にメールのやり取りで包丁について釣りについて?
熱く語りあっている「酔心倶楽部会員」の大澤様より『天然砥石・私の見解』を頂きましたので
掲載させていただきます。 文章って難しい!大澤様の説明はとっても解り易いので!


酔心倶楽部会員 No.552 北海道 大澤啓二 様
酔心300mm柳刃総模様青二鋼 酔心210mm出刃銀三鋼 ご使用。

〜天然砥石・私の見解〜

天然砥石で光り方の秘密、私なりに考えてみました。
ポイントは酔心特集にある『微生物などの死骸が海の底に溜まって固まった物』
ではないでしょうか。
以前、青木さんがメールに書いていた『天然砥石には番数が付けれない』という
言葉ですが、これって単純に考えると砥石自体に含まれる粒子の大きさがバラ
ついているということですよね。

人造砥石の場合、粒子の大きさが一定のためマクロ的に見て磨かれた面の凹凸が
規則正しくなることから光が均一に反射するので、鏡面のような硬いというか
シャープな輝きを生み出すんじゃないでしょうか。
その点、天然砥石では粒子の大きさが不均一のため、比較的大きな粒子と更に細
かい粒子で一緒に磨くことになり、ソフトで奥の深い光り方をするのではないかと
私は思います。
私はそう推測したのですが、やっぱ違いますかね。


上記のメールは、僕が

『天然砥石と人造砥石関する新情報Getです。
人造の方が#10000とかの仕上げがあり粒子が細かいのに何故、天然の方が
マッタリとしたより深い味の光方をするのか!←興味深いでしょ!
これは図を作って説明しないと無理なので、今晩辺りに図をカキカキします。
来週の頭には追加情報としてUPしますので、連絡差し上げます。』


のメールを送った返信なので最後に「やっぱ違いますかね?」の文があります。

これは、大正解で僕が説明したい事を完璧に表現されていたので了承の上UP
した次第でございます。


PS:2002年5月20日より本社が移転いたしました。移転の際に沢山おいしい商品が出て
   きましたので、6月頃から新本社移転記念セール!を考えております。
   詳しくは、6月頃に「酔心夢工房」をご覧ください。


特集TOPへ