2003年10月期 |
冷夏だと言われたのに残暑が厳しいながらも、ようやく秋の気配感じる季節になりました。 僕の自宅が田舎な為に朝晩は、肌寒く感じられる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょう。 今回の酔心特集では、フグ引包丁について色々話を進めたいと思います。 今回の特集は2段アップロードで、10月1日に初回UP10月7日or8日に2回目のUPを行う予定です。 ふぐ引きについて! 柳刃よりも刃幅が狭く、薄く軽い包丁です。何故に薄いのか?答えは簡単でフグを薄く引く為に包丁を 薄くし、刃通りを良くする為です。 補足:フグ引の用途はフグの上身を刺身にしたりする際に使う包丁です!これでフグの歯などは 割れません!もしも割れたとすれば・・包丁も猛烈に欠けていると思います。 7月の特集で「上田屋さん訪問」で聞いた話ですが、関西のフグは厚く引く場合が多いそうです。 なぜなら、薄く引くと「ケチや!と言われるから」と言って居られたのと、厚い方がフグの旨みが分かる からと言って居られました。 関東は、お皿の絵が透けるほど薄く引くと聞きます。なんでだろう?と自分なりに色々考えてみました 一つは皿に盛った最の美しさ!食材と食器(絵皿)のコラボレーション的な事なのかと・・・。 それと、風土的な物があるのでは無いのかなと思います。東の都は東京、昔は江戸の町で美しい 料理を求めて昔の料理人が思考錯誤して考えたのでしょうか! 個人的な考えでは、関東は気品が高く、関西はくいだおれの町的なイメージがあります! 実際の所どうかと思いますが、関東方面は小皿にちょっこっと系で、関西はてんこ盛り系! そんな事を考えると、京都は? フグの本場下関は?と頭がワイワイするので、これは皆様の ご想像にお任せすると致しまして。 関東は極端に薄いフグ引きを求められます。包丁がしなるぐらいまで薄くして!と言う事を東京 のお店から要望があります。 これは特に関東の方が良くご存知かと思うのですが、切れない(切れ止む)包丁で薄造りをすると 皿を一周したら身の厚みが変わってくると言う事を聞いた事は無いでしょうか? 僕個人的には厚みが変わってる!の経験は無いのですが、切れ味が落ちると薄けなくなると思う のです。これは、調理師の腕うんぬんの話で薄く引きたくても引けなくなってしまうのでは! と考えます。某有名伝統工芸士の方は経験したそうです。 そう考えると!やはり良い包丁は、切れ止まない包丁が本当に良く切れる包丁であると言えます。 一瞬の切れ味が120%でも、半身を薄く引いた後の切れ味が70%などになれば、良い包丁とは 言い辛いのかも知れません。 こんな人は居ないと思いますが!調理中に包丁を研いだりすると、鉄の臭いが食べ物に移ります! (鉄の臭いは鋼の場合で、INOX鋼などは比較的鉄の臭いが少ないように感じます!) 鋭い切れ味が長く続くと言う事を求めれば、青二鋼本焼などが考えれます。 しかし、使い手を選ぶのも本焼包丁の性で、上手くあしらわなければ欠け、割れなどの悲しい 結末も有り得ますし、本刃付の際、硬い為に研ぐのに時間が必要な事も挙げられます。 一般的なランクでフグ引を求めるなら青二鋼鍛造(霞)になるのかも知れません。 本焼包丁を腕のある調理師さんが使用する場合のメリットは、一度綺麗に本刃付けした場合、 毎日の研ぎが楽になると言う事があります。一日使用して、仕事終わりに天然砥などでチャッチャ と刃先を合わせれば、切れ味は戻ると思っています。(2、3日に一回は中砥へ戻る事は必要) 逆に、経験が少ない調理師さんが本焼を使用して、包丁を欠かした場合その欠けを直しその包丁を 現役に戻すには硬い為に恐ろしい時間を要します。 今現在、机上の理論で考えられる手頃な価格で良いフグ引包丁をGetするには、 1.硬い青二鋼鍛造包丁を探す!(値打ちコクようですが、10年物などの古い締まった包丁) 2.疾風のような生まれながらにして硬い包丁!(営業っぽいですね(^^;)これは高価です。 ちなみに疾風にフグ引シリーズは造っていません。しかし数量限定で製作したいです! 3.刃物専門店で、いかにも古そうでサビが浮いてそうなフグ引包丁を買う!見た目は悪いですが、 その店で長く陳列されてる可能性があるので、硬く良く締まっている可能性がある。 上記写真は、10年物9寸フグと柳刃です。 上記3つが現実的かも知れません。1の硬い青二鋼鍛造包丁を捜すのが一番困難かも知れません。 2の疾風は製作すれば、土井敬次郎氏が硬く、研ぎ易く、粘りのあるフグ引を製造して頂けるかも 知れませんが、酔心夢工房製品の為、高価な物になる可能性が非常に高いです。 3の刃物専門店を散策して、陳列にある骨董品に近い包丁を売ってもらう!これが一番良い手段かも 知れませんね!その際は、歪みや裏付け、シノギ筋の状態をしっかり見る事が重要です! 何かエラーがあって売り物にならず陳列で長い時間を過ごした可能性もあります。 薄い包丁ほど、裏スキの状態や、歪みを見る事が重要です。 長い間、陳列に入っていて、それでも歪まない包丁は生まれが良く、かなり良い包丁である可能性が 高いです。 注:酔心夢工房製品が何故に高いのか! 夢工房では、とにかく良い製品を造る為に、ちょっとしたキズ(包丁本体、刃、柄)などは全て 除いています。手造り故に色々問題も発生します。夢工房はコダワリの中のコダワリで有りた いので、高価になります。検品率に関しては非常に厳しい工房です。 フグ引包丁の銘切り 薄く引く為の薄いフグ引にもメーカーの名前「酔心青二鋼」などが切られています。 最近思うのですが、この銘切りにもちょっとした問題が希にあります。 タガネで職人さんがトントンっと切るのですが、かっこ良く切る為には銘に角が立ちます。 これが薄く引いた際に引っ掛かり嫌がる調理師の方が居られます。 切り刃には角度がついているので、引っ掛かりなどは少ないとは思うのですが、現場の意見として 耳にした事があります。その場合、酔心の対応としては、銘切り後に木槌で銘を叩いて角を取る事 や、その包丁が本焼きならば銘切り後に鏡面を掛けるなどの対処を行います。 銘切り後の鏡面は銘自体の存在感が薄くなりますが、それなりにカッコ良く引っ掛かりも無に等し いので、良いな〜〜と思うのですが、仮に鍛造包丁を鏡面に加工すると値段が上がります。 海外のお客様から、自分(個人)で鏡面にする方法を教えて頂きましたが、ネット公開の承諾を得て 居ませんので秘密ですが、これが出来れば買ってきた包丁を自分で銘切部分をカスタムできます。 第一回目のUPはこの辺りにして次回は上田屋さんにもう一度訪問しますので、現場のご意見を頂いた 後、再度UPさせて頂きます。 上田さんの意見と共に、今回特集しなかったINOX鋼本焼フグ引包丁を特集します。 |