2003年11月期

もう嫌だぁ〜っと言うほどに風邪を引きました・・・。
今年の風邪は熱があまり出ないのに、鼻と喉を痛め付けます。
風邪は寝たら治ると言う持論も、寝すぎで背中、肩、腰が痛い!
しかし、11月1日なんとか復活しつつあるので特集UPに取り掛かりました。

出刃包丁
さて11月期は出刃包丁です。現在「疾風」「彩」に続き企画開発しているのが、
伝統工芸士「富樫憲治」氏が打つ「鬼手仏心」です。10月は、出刃について結構考えました。
出刃は大きく分けて「本出刃」「中身出刃」「小出刃」「相出刃」「身卸出刃」「黒出刃」と
6種類程に分かれます。

「本出刃」
これは重い出刃で、昔からある出刃で基本と聞きます。
現在一番使用されているのが、水産加工などの魚を解体する現場が多いようです。

「中身出刃」

本出刃よりも薄い出刃です。この辺りは調理場で使用されている出刃ではないでしょうか!

「小出刃」

名前の通り小さい出刃で、アジやチャリコを捌く時に使い易い出刃です。

「相出刃」

中身出刃よりも薄く、使い易い出刃です。これで骨とかを叩き切るには難しいですが、切る部分
に刃先を当てて上から押さえ切る用途で使用します。三枚に卸したりするにも最適で扱い易いの
がメリットです。

「身卸出刃」

通常の出刃より切っ先が尖っていて、刃先にあるアールが他の出刃とは異なります。
用途のメインとしては、三枚に卸す事です。切り刃の角度がやや緩いので極端な話、柳刃風に
使用する事も可能な場合もある!柳刃ほど薄く引けないですが腕次第。まあ情報として!!

「黒出刃」

これは、平の部分を鍛冶屋から上がってきたままで黒く残し、研ぎ費を押さえた包丁です。
主に家庭用として販売されていますが、水産加工などの現場で使用する場合も多くあるようです。

上記に出刃別用途を書きましたが、それ専用と言う事は無いので一般論として記載しました。
出刃とは少し違いますが、鮭切り、鯨切りなどもあります!
鮭切りは出刃と言うよりもデカイくてちょっと厚い片刃の牛刀な感じです!鮭を捌いた事はない
ですが、捌き易そうな形状です。

出刃の角度って!「再び包丁の角度」
以前包丁の角度を特集しましたが、職人さんにもう一度色々聞いてみました。
それが結構分かりやすくて、前回色々掲載したウンチクよりも説明が早いので出刃特集ですが
再特集です。
包丁の角度は、切り開く為にある!と言った事を掲載しましたが、切り開く為なのは分かって
いる事です(汗)角度が強い順に並べると、「出刃」「柳刃」「薄刃」の順です。
これら3種の包丁で、生のジャガイモを切ったとしましょう! 出刃で切ると切り終わる前に
ジャガイモがパッキっと割れてしまうハズです。柳刃で切った場合割れないでしょうが、
真っ直ぐ切れない、力が乗らないと言った事になるでしょう。そう考えると薄刃は素材を痛めず
に真っ直ぐ切る事に適していると言えます。

逆に薄刃で魚を捌きに行くと、身を切り開けず刃が薄い為に欠けまくるでしょう。
薄いなら刺身を引けるんじゃ?ともなりますが、今度が長さが無い為に引き切るのが困難なのと
そぎ切りが非常に困難だと思います。

それぞれの用途に合った包丁を使用するのがベストと言えます。
でも、調理する魚と研ぎ方によっては出刃で捌いて、ブツ切り(厚めの刺身)程度の切り身なら
できますよね! それは調理師さんの腕と感覚とこだわりの世界ですが!!!


柄で出刃が軽くなる?!
大抵の出刃包丁には、それに適応した柄が付けられています。
これは、昔からの標準で柄屋さんが代々受け継いだ太さや長さです。
堺には鍛冶屋、刃付屋さんの他にも包丁の柄屋さんが結構あります、そのお店ごとに多少サイズ
が異なるようですが、基準はある程度固まってそうな感じです!
柄で出刃が軽くなる!というのは、柄を標準より少し太くする事にあります。
柄を大きくする事で多少の重量バランスで重心が変わりますが、それよりも手に持つ感覚が変わり
ます。人によっては好き嫌いがあると思いますが、柄が太いとあの重い出刃が軽く感じます。
6.5寸の出刃に7寸の出刃の柄を付けると、「えっ!」と思う程軽く感じます。
車のハンドルで例えれば、細いハンドルより太めのハンドルの方がしっかり握れて疲れないとか
力が乗るなどのメリットが生まれます。(太過ぎるのは論外です!)

包丁の場合、後ろバランスにすると切っ先が軽くなる事が考えれますが、その重心移動よりも
握る手の感覚で軽く感じると言う事がかなり大きいと考えます。

個人的な感覚では、柄が太くしっかり握れる方が安心感と包丁をコントロールしている気がして
良い感じです。多分手が大きいからかも知れません!

もし、太い柄に交換したいなどの希望があれば、info@suisin.co.jp にメールなどして下さい。
柄の代金、送料などは必要ですが、交換などさせて頂きます。一番早いのは、来社して頂ければ
その場で交換も可能です。(柄がゴロゴロあるので、その中からお気に入りのを見つけて即付け!)
土日祝除くAM9:00〜PM5:00が営業時間です。


出刃は他と違う焼戻しが必要!
顎で叩き、切っ先で身を卸す出刃、全て同じ焼戻しではイマイチな場合があります。
これは鍛冶屋さんに聞いた話ですが、切っ先は焼戻しを押さえて硬さを残し鋭い切れ味が出る様に
する、顎(刃元)は焼戻しを多めにして、ちょっと硬さを抜いてあげる事がポイントだそうです。
顎で叩く場合が多いので、しっかり戻さないと深く欠ける原因になるからだそうです。
画像では顎部分をしっかり戻し、切っ先部分の戻しを甘くしているように表示しましたが!
切っ先も戻しがやや多めです。じゃないと欠けると言うか、飛んでしまうので!



出刃の刃付けも他の包丁と違いますが、これは何処の専門書にも載ってる事ですし皆さんご存知の
通りなので、控えます。堺特有の裏技的刃付けと言えばハマグリ刃にする事でこの辺りは、皆さん
の研ぎに関する楽しみを奪ってはダメと思うので控えます(笑)書き出すと止まらないですし!

話は長くなりましたが、鬼手仏心の基本は相出刃で行こうと思っています。

鬼手仏心
鬼手仏心の語源は、外科医にあります。
患者さんの病を治す為に、体にメスを入れる鬼の手。
しかし、それは患者を治したいと思う仏の心です。

魚に対して一番最初に使う刃物は、一般的に出刃包丁です。
魚にすれば、「なにするねん!」っと思うかも知れません。魚に尋ねて無いですが、魚の一生を
考えた場合、同じ食べられるなら美味しく食べて欲しいと思うのです。
それが、魚に対しての供養と言う調理師さんも居られます。
そう言った思いから、魚にしては鬼の手ですが、調理師さんは美味しく食す為に捌くと言う仏の心
で出刃を使用していただきたい事からこの名前を付けました。

鬼手仏心は、白二鋼を採用し鋭い切れ味を追及しています。
伝統工芸士「富樫憲治」氏は、白二鋼の出刃を最も美しく焼き入れ出来る職人さんです。
白二鋼と言う素材は、純粋で焼き入れ幅が非常に狭い為に焼きムラが出来やすい素材です。
それらを焼き入れしやすくする為に、堺では白三鋼を使用している鍛冶屋さんが多くいます。
富樫氏は白二鋼の特性を理解し鋼材を効率良く熱処理し厚い出刃を綺麗に仕上げます。

現在御使用されている白二鋼の切れ味はもしかすると白三鋼の切れ味かもしれません・・・。
仮にそれが白二鋼であっても、包丁裏の鋼部分には白く曇った斑点が見えるかもしれません。
白い雲のような斑点は、その部分が焼きが入っていない事です。
その部分まで研ぎ込むと、雲部分で切れ味が落ちるだけでなく、欠けたりするなどのエラーが
発生する可能性は否定できません。
出刃より薄い柳刃でもそういった事が希に発生しています。薄い方が焼入れが多少容易いはず
なのに! 厚い出刃を綺麗に焼き入れし、鋼の分子構造を整え白二鋼最大の切れ味を発揮する
出刃を伝統工芸士「富樫憲治」氏と酔心夢工房が、こだわりを持って製作した出刃包丁が、
鬼手仏心です。

柄も色々考えていますが、多くの調理師さんに使って頂けるよう価格を押さえる為に、手に
馴染みやすい、朴柄を考えています。 形状は八角柄か六角柄で水牛部分は長輪使用にしよう
と思っています。しかし、八角の角が手に当って痛い!などの意見もあり悩む所です。
出刃を持つ角度が変わる(捌く際にクルクル方向を変える)時にどの状態でも手にはまる柄が
楕円系なのですが、ん〜〜〜普通過ぎる(笑)

豆知識:栗型柄(シノギ付柄)は薄刃、柳刃、身卸出刃など薄めの包丁に使用されます。
    何故なら、持つ手の角度を変えにくくする為です。上記の包丁の場合、角度を決めて
    切る場合が多いので、大抵の薄刃、柳刃には栗型柄が付いていますよね!
    そういう事です!

現在の進行状況としては、富樫さんと相談している最中です。鍛冶屋さんの意見、刃付屋さんの
意見、酔心夢工房の理想を合わせて最良の包丁を製作する為に思考錯誤している最中です。
完成は年末〜年始を目安に来春発売を計画しています。

これから富樫さんのページが更新の嵐になるかも知れませんので、希に覗いてみてください。
http://www.suisin.co.jp/togashi/  (まだ更新してませんので!トホホ・・・。)


また理論がましくなってしまいましたが、出刃について興味を持って下さいましたか?
焼き入れ、焼戻しの情報は堺刃物の上(良いランク)の包丁の事ですから、安価な包丁の情報では
ありませんが、値段の差などはそういった細かい所の作業だと思って頂ければ幸いです。
前回も申し上げたように、柄の太さなどは個人の好みですので、一概には言えませんが、もしも
興味がある人が居られたらご連絡下さい。
そんなこんなでこれから寒くなりますが風邪など引かずに皆さん頑張りましょう!!

PS:今回の出刃特集では画像が少ないですが、後々UPします。


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