2003年12月期

洋包丁を研ごう!

今回の特集は、洋包丁の研ぎです。
今まで和包丁に関しての研ぎテクなどを多く紹介してきましたが、今回は洋包丁のハマグリ刃
について、特集しました。ADSLなどのブロードバンド系では無い方には画像が多い為重いかも
知れませんが、ごゆっくりご覧下さい。

洋包丁は、「牛刀」「ペテ」「筋引」「洋出刃」「サバキ」などがあります。
それぞれに用途があってそれによって研ぎが多少異なります。

洋包丁には色々ありますが、たいてい一枚物(鋼一枚で造られている)です。言わば本焼!
裏表ともに平らな包丁で、裏に窪み(裏スキ)などがある洋包丁は少ないです。
正確に言うと無い事もないです!更にリブ付きの包丁はブレードにボコボコがある場合もあります。
リブの意味は?って皆さんご存知ですよね!切った物が包丁に付かない為に刃通りが良いとか、リブ
を骨に当てながら切ると刃先を痛めないとか!ただ、研ぎ込んでリブまで来たらどうなるんやろ?と
思うのは僕だけでしょうか・・・。

さて本題の研ぎに入ります。和包丁でもご紹介した通りに洋包丁でもハマグリ刃、糸引刃は適用でき
ます。リブ付きの包丁は強制的に切り離れが良いので特にハマグリ刃にする必要はありません!
ブレード部分が平らで、食材がくっつき易い包丁ほどハマグリ刃は効果を発揮します。
糸引き刃は、刃持ちを良くする為にも付けると便利な場合があります。

研ぎやっぱり、ハマグリ刃などを適用すると良いと思います。
野菜などを切るには問題ないかもしれませんが大きい肉をサーロインステーキ風に切る時には、
ある程度刃が入ると切った肉がブレードにへばりつき刃通りが悪くなります。
(切れ味落ちて無いのに肉と包丁の摩擦で切れなくなってしまう!)

ハマグリ刃の付け方は、和包丁よりも簡単だと個人的に思っています。
特集内で、ハマグリ特集をしましたがハッキリ言って、言葉で説明されても分からないと思います。
画像も使用しましたが、粗末な画像でしたので・・・(汗)
今回は、少しマシな画像をご用意しました。


ハマグリ刃の切り離れイメージ!

極端に表現しましたが、シノギ部分が滑らかに
なっている事で切った物が滑らかに離れて行きます。
シノギがしっかりあると、一瞬切り離れが良いと思い
ますが、シノギの角部分がわずかな抵抗になり、
スパッと切れる印象が薄まります。

ハマグリ刃の真の目的(機能、性能)は、良く切れて
切り離れが良い事に尽きます。


酔心の洋包丁で説明しますが、酔心の洋庖丁類は7:3〜6:4で刃付けしています。片刃気味!
当然7:3の、7(表)は少しシノギ筋が立っています。(切り刃が広いんです!)
購入時は、このシノギが良い感じに働いて切った物が離れます。
当然切れ味も落ちてくるので、砥ぎますよね!そうすると段々刃先が厚くなります。
研いだ瞬間は切れ味が戻った感じがしますが、これは一種の錯覚で、切れなくなった包丁を研いだ
わけですから、切れ味が戻った感覚になってしまうのです。

洋庖丁も背中から刃先に向かって多少薄くなってます。このシノギ筋任せに研いで行くとドンドン
包丁自体が厚くなるのは分かって頂けるでしょうか?そうすると、購入時と同じシノギでも、根本的
に厚くなっているので、切れ味が落ちる要素は整います。

本格的刃物専門店が洋包丁を修理する場合、この厚みを抜きます。これをしない所はモグリ(笑)
厚みを抜くのは大変ですが購入した時点で、ある程度抜けば後が楽ですよ〜〜!

よく街中で包丁修理とまわって来る研ぎ屋さんは、刃先を研いで刃先を整えるに過ぎないと考えます。
でもこれは、主婦相手だったりするので、問題無いんですが、プロの方には使用頻度が違いうので
本職の方には通用しない!!

包丁の減り具合に合わせて庖丁本体の厚みを調節してあげる事が最も重要です。 ここまでは、基礎知識です。

ここからは、本職の方への情報!洋庖丁ハマグリ刃付けです。
もっと長く切れて、もっと楽に切れて、切るのが楽しくなる様な庖丁を誰もが使いたいハズ!
上記に書いた厚みを抜いて・・・・と言う作業後の話です。
先に申し上げますが、個人で作業をした場合には見た目は非常に悪くなります。
下記の画像を参照して頂ければ分かるように、シノギを消してしまうのです。シノギは消えるんですが
シノギが存在する刃付けを行います。

洋包丁ハマグリ刃の付け方
わずかな事ですが、これが良い切れ味を生むんです。 左図の様に研ぎ落としても角が残ります。
この角を取ってしまいます。極端に言えばこの部分を
(注)ローリング研ぎしてしまうわけです!

(注)ローリング研ぎが悪いと言われている理由
   どこの本を見ても、サイトを見ても「絶対してはいけないローリング研ぎ」と書いています。
   その理由は、刃先が丸くなるからです。これは刃から数ミリ上の部分で行うローリングなので
   問題は無いですが、刃先でローリングすると丸刃になってしまい、包丁が食材に切れ込まず、
   丸い刃で押しつぶす現象が発生します。食材にも良くないし、勿論!無理やり切るんですから
   切れ味を楽しむ事は出来ません。ハマグリでは、シノギ筋を落とす為にローリングを使用します。


これで切れば切り離れるし、刃先が薄くなっていないので欠けにも強く、後の刃付けも楽になります。
これらの作業(ハマグリ)は牛刀、筋引、ペテナイフには最適な刃付です。
しかし、サバキ、洋出刃などは逆にシノギを立てて研がないと用途的に耐える事が出来ない可能性が
あります。これらは、調理師さんの使用方法によります。

忙しくてどうしようもない状態ってありますよね?そんな時、包丁の扱いが荒くなってしまう事があり
ます。薄く研ぎ上げれば良く切れるんですが、ちょっと荒く使うと欠けたり、刃先が曲がったりします。
そんな時は少し切れ味を落として刃に強さを持たせてあげる事が必要です!

これらは、メーカーサイドでは対応出来ない部分です。
もし堺の酔心まで来て頂ければ「ワシはこんな使い方するんやけど・・それなりに研いでくれ!」と言
って頂ければ対応できますが、大阪に住んでる方しか時間的に無理かも知れません・・・。

これまた車の例えですが、自分が運転しやすいように、ルームミラーや座席、ハンドル位置を変える感じ
で包丁もカスタマイズして頂くのが最適です!

実写で見るハマグリ刃工程!
SUISINの洋包丁を購入された際の状態です、
工場から上がってきて刃研ぎ状態を確認します。この時、刃に白い所(切れない部分)があった場合は研ぎ直します。だって買った瞬間から切れないのって嫌ですからね・・・。
 
 
刃先のシノギを広げる作業の図!指の位置と包丁の角度に注目して下さい。本とかでは10円玉2枚などの
表記があると思いますが、それよりもちょっと角度がある方が良い気がします。この作業である程度のシノギ
を決めてしまいます。 もし、「野菜しか切らない、サンドウィッチを切るんだ!」と言う方はこの時点で包丁を
寝かせて研いで下ください。ただし、寝かせれば寝かせる程、刃は薄くなり衝撃に弱くなる事をお忘れなく!
薄くした方が良く切れるんですけどね・・・。
 
上記の包丁を少し研ぎ、切り刃を少し広げました
 
 
次に、シノギ筋を取りに行きます。指の位置と角度に注目なのですが、シノギ筋部分を取りに行くので、押さえる指の位置は、包丁の真ん中に近い部分!この押さえている部分の下が研げます。
「その他の部分も砥石に当たってるじゃん!」っと言う方も居られると思いますが、他の部分は研ぐと言うより擦ってる?程度で見た目に研ぎ目は入りますが、全然研げません(減りません)!

この時に、折角作ったシノギを完璧に取ると単に薄くしたダケになるので、注意!
シノギの角を取ってやる感じでローリングします。刃先部分は、極力砥石に当てないように注意!
写真の様に寝かせれば刃先が砥石に当たる事は無いと思いますが・・・。
 
包丁を更に寝かせて研ぎました。こうなると、よほど手がはまらない限り綺麗な状態にはなりません!本来ならこの状態でバフを当てて研ぎ目を合わせるのが主流です。
そもそもシノギ筋があった部分にヘロヘロですが線を入れてみました。
 
 
写真左の様に切っ先も綺麗に抜いてあげましょう!写真右は、一瞬手がコネてカッコ悪くなってしまった状態です。見た目を重視するなら、この辺にも気を使いましょう!ゆっくり動かせばコネないと思います。
僕は、ガァ〜っと研いでしまい、包丁がペタっと砥石に密着してしまいました(泣)
 
アゴの部分は、まだシノギが残っています。これを研いで少しローリングさせたのが
写真右側の部分です。鏡の様になっているでしょう!この部分がハマグリ!!
これでスポンジを切ったのですが、刃の通りが全く違う!!
一見ハマグリ部分が薄く感じますが、ダンボールなどを切っても刃が白くなってなかった
ですし、刃欠けも全くありませんでした。安心してズバズバ切れました。

右側の様な刃にしてから、仕上げ砥で包丁を寝かせてややローリングさせながら研ぐ
事が重要です。その時砥石に当たってる部分(裏の指の位置)はシノギ筋の上です。
これで、刃先をローリングする事なく(丸刃にならない)ハマグリが完成します。
 
両刃の場合、裏も同様の作業で研いで下さい。結構難しいので怪我には注意して下さい。
ハマグリ刃の裏研ぎですが、裏は少し立て気味でシャシャっと軽く研いで下さい。上記写真で見たハマグリ刃は
8:2になっています。これでは、やや切った物から左に切り口が逃げて行く感じがします!(削ぎ切り気味)
これが嫌な方は、裏からももっと研ぎを入れる事で解消されます。

最後に包丁を立てて研ぐ(糸引き)をすると刃が強くなります。しかし、少し切れ味は落ちます。
よく切れて、刃が強い包丁があればなぁ〜〜。
 
 
写真左は、糸引刃を付ける時の角度です。研ぐのでは無く、撫でる感じで研いで下さい。
刃先にすぅ〜っと糸が入った様な刃が付けば、写真右のように裏を研いで終了です。
裏もやや立て気味の方が刃が強くなると思いますが、あまり立てると切れ味が落ちますので!!
写真の角度は結構寝かせてますが、切れ味重視の図ですので、ご注意下さい。
 
写真のふきだしにあるように、光って見えるのが糸引き刃です。写真の包丁はデジカメで写るように広めに糸引きを付けました。砥石で立てて研げは、糸なみに細い刃が付くのが確認できます。

SUISIN洋包丁関係は、糸引を付けた方が格段に刃持ちが良くなります。それは素材の話で、粘りがある包丁だからです。下記の内容を見た場合硬くないって事なの?となりそうですが、切れ味と永切れの中間を取り、更に万人に使い易い包丁として設定されてるのではないでしょうか!

これは社長に聞かなきゃです!

SUISINの包丁素材は「8−A」です。
それより硬い素材は「10−A」、超安い素材は
「6−A」です。要は炭素量の差だと思います。
数字が高い方が炭素量が多いです。
変な話サビ易い??またこの辺は詳しく説明する時が近日来ますので、おあずけです(笑)
 
よく切れる=硬い包丁 刃持ちが良い=粘りがある包丁 粘りがある包丁=そんなに硬くない包丁
答えは出ないんですが・・・。硬いと良く切れるが刃が弱くなるので、早く切れ止む!硬い方が強いんじゃない?
そう思うんですが、硬いほど衝撃に弱く、失敗すると深く欠けます。硬いから研いで治すのに時間が必要!
難しいですねぇ〜〜。 ちなみに激安の包丁とかは、メチャクチャ硬いです。研いで使うという観念はゼロですね
当社みたいに機械があっても、しんどいと思う硬さだから、お客さんサイドの小さい砥石で手で研ぐのは困難!
 


まとめ!
牛刀、筋引、ペテナイフは多少薄く研いだ方が良く切れます。ハマグリ刃を付ける事で切れ味を落とす事
無く、良い切れ味を発揮させ、切り離れも良くなります。
洋出刃、サバキは、骨に当ったりする可能性もありますので、2段刃にしてしまうのも良いでしょう。
そこまで激しい使い方をしない方にはハマグリをお薦めしますが、洋出刃、サバキは切り離す削ぎ切るの
を目的をするので、しっかり刃を立てる方を絶対的にお薦めします!


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