2003年1月期


皆様、あけましておめでとうございます。
今年もナイフシステム、酔心、酔心夢工房を宜しくお願いしたします。
今年もまた、特集を続けたいと思っております。更新が遅くなったりする事が多々あると
思いますが、長い目で?見て下さい。

しかし、年始の寒さは一体何でしょうか・・・。
琵琶湖に釣りに行きましたがウルトラ寒かったです!(でも釣れた!)
初めて雪がしっかり積もった道をノーマルタイヤで走りましたが結構怖いですね!
北より、日本海側の方からすれば蚊の鳴くような積もり具合だったのでしょうが近畿の比較的
暖かい地方に住む僕としては初体験でした!


さてさて!今年一発目の特集ですが、包丁が最も切れる時期のお話です。
時期!と言うと季節の様な気がしますが、そうではなくて新品の包丁からどれくらい使用すれば
良い切れ味が出てくるかです!

こ〜れまたマニアックな話になるのですが、製造工程から話です。
ともかく鋼系の包丁は必ず熱処理(焼き入れ)されています。焼きが入って居ない包丁は無い!
焼き入れする場合、包丁を炉で温めて水に入れます。包丁は全体的に赤くなり全てが同じ温度
になっていると思いますが、究極の事を言うと外側と内側の温度には微妙に誤差があります。
内側が熱くなるには外側から熱くするしか無いですもんね!
更に焼き入れする場合、外側から冷えてきます。内側はゆっくり冷えます。
この誤差が今回の特集の要点です!

鋼はゆっくり冷やすと粘りが出ます。(ゆっくり冷やす為に油焼きがある!)
堺では鋭い切れ味を求める為に水で一気に冷やします!和包丁は多少厚みがある為に鋼を
硬く焼き入れしても無茶をしなければ折れたり欠けたりしにくいです。
油焼きはむしろ洋包丁に適用されます。あの薄い洋包丁をカンカンに硬くすると折れるし欠ける
原因になります。 和包丁の硬さが63%ならば洋包丁は59%位を想像して下さい。
大した差が無い様に思いますが、これが意外と差があるんですねぇ〜(^^)
(63%近く焼きの入った牛刀も堺にはありますよぉ〜使いこなせる人向けですが・・・。)

そんなこんなで話を戻します。和包丁の外側と内側は焼き入れ時に熱の掛かり方が違います。
そこから、刃付け屋さんに行きます。ここで皆さんが良く見る包丁に仕上げるのですが、鍛冶屋
さんから上がって来た包丁をテコを使って荒研ぎします。←http://www.suisin.co.jp/doi/参照
この時、包丁に熱を持たせないように水をかけてゴ〜っと研ぎますが、多少の熱が生まれます。
小さい火花が出る位の勢いで研ぐ職人さんも居ます。そんなこんなで各工程で熱が包丁にかか
ります。 包丁に熱がかかると良く無い事はご存知でしょう、理由は焼きが戻るからです。
焼きが戻ると切れない包丁になってしまいます。(包丁の形をした単なる鉄の塊)
上記の工程は包丁を製造する上で最低限の包丁に対する熱です。
熱を持った部分を含んだ鋼が包丁の刃先に現れています。これで店先に並びますが、この状態でも
切れます、今回の特集は究極と言う事をお忘れなく・・・・!

究極の話、堺刃物の本当の切れ味はお客さんが引き出すのです!
新しい包丁を購入してから包丁が一分程減った位が最も切れる状態になります。
お客さんは手で研ぎます、まさか機械でガ〜っと研ぐ人は居ないと思いますし、そんな機械を所持
していたらビックリです。

手で研ぐ事により包丁は熱を持たずに、ゆっくり減って、熱に犯されて居ないピュアな鋼が出て
きます。その鋼、その刃先が、最も包丁として良い部分なのです。
「和包丁は研いでこそ本来の性能を発揮する」と言う言葉がありますが、まさにこの事ですね!
自分でゆっくりゆっくり研いで手に馴染む頃(使い易いと感じた頃)が最も良い状態かもしれません

逆に、究極の事ですが包丁が小さくなり過ぎると(内側に入り過ぎると)徐々に良い状態から遠ざか
るのかも知れませんね!←これは僕の憶測ですが!

上記に書いた事は、良い鍛冶屋が打って、良い刃付け屋さんが研いだ包丁を前提でこのような特集
をしていますので、変な鍛冶屋?変な刃付け屋?が造った包丁は上記の内容は嘘になるかも!
更に、お客さんがキッチリ砥ぐ事が出来ての話ですので・・・・。

今日、土井さんが会社に来られて言って居られました。
「職人は調理師に最高の道具を提供するだけなんだよ、渡したら職人はもう手を掛けれない。」
「調理師さんが自分で研いで使いやすく、切れ味を出す研ぎを入れるしかないんや!」っと、

少々偉そうですが、僕の解釈としては、最高の素材は供給した!生かすも殺すも貴方次第!
と言う事のような気がしました。 最高のマグロを入手しても素材を生かせない人は最高のマグロ
を殺してしまう事になると言う事ではないでしょうか!

鍛冶職人、刃研職人、調理職人、全ての職人魂、根性、情熱が良い物を作り出すと僕は信じています。
僕は、メーカーの人間です。僕も、仕立ての職人魂を持って良い製品造りを心がけ、食に関わる職人さん
達の架け橋となれるように今年も気合を入れて頑張りたいと思っています。

皆さん、今年も頑張りましょう!


PS:何か熱く語ってしまいましたが良い切れ味を求めて貴方好みの包丁に育てて下さい!

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