2003年3月期


 さてさて、春めいた日があったと思えば・・また寒くなって体調管理が大切な時期です。
こんな事書きながら少し風邪気味の僕です。花粉症が無いだけマダましかなぁ(苦笑)
前々回のハマグリ刃&前回の本刃付けについての特集で「糸引き刃」について疑問?
「本当に立てて研いで良いの?」「本当にこれは正解なの?」とご意見を頂きました。
そんな事から今回も研ぎについての特集です。

ナイフシステムでの最終刃付けについて!
酔心製品は購入頂いた方ならご存知と思われますが、購入頂いた瞬間から結構切れる様にして販売しています。
当たり前デス(^^) しかし、買った瞬間から本刃付けだと見た目が悪い(霞の部分がイライラ光る!)そして
どのレベルのお客さんが使用されるか分からない理由から研ぎこむ事は無いです。
購入された方が結構な腕前で、「お〜ここまで研ぎ込んでくれてたら後が楽やなぁ〜♪」と言う方も居ると思うの
ですが、素人の方が買った場合、もしくは使いきれない方が使用した場合の事を考慮してと言う事です。

おさらい!砥石の種類
ナイフシステムの研ぎ場にある砥石達です。
普段はドロドロ?なのですが、特別綺麗に洗浄して見やすくしました(笑)

1、荒砥   #220 2、中砥  #1000 3、仕上砥 #8000
 
4、天然砥石 5、ダイアモンド砥石  


1、荒砥
機械でが〜っと出来るのでこれは滅多に使いません!が、細かい部分は荒砥を使います。
僕はまだ未熟な為に機械でやると幾分凹凸が出来てしまうのでこれで均します。
職人さんは機械でガ〜っとしちゃうのでそんなに使いません。
使用目的には刃の欠けを直す物です。この荒砥の部分でしっかり包丁の形を整えます。
これを怠ると後々の作業が困難かつ面倒になってきます!

2、中砥
これで荒砥の目を消します。普段の研ぎ(刃欠けが無い場合)ならば中砥からスタートです!
実際この中砥で十分切れる刃付けが可能です。極端に切れ味を求めない人ならばこの砥石で
研ぎ上げて終わりですね。
この砥石で研いだ包丁は特徴として霞(軟鉄)の部分がネズミ色?になります。
日本昔話に出てきそうな包丁の色合いになると申しましょうか(笑)
ナイフシステムでの本刃付けは中砥から始めます。(新品は欠けて無いので!修理は別です。)

3、仕上砥
これで刃先をより細かく仕上げます。粒子が細かいので細かい刃が付き滑らかに切れる包丁に
なります。仕上砥で切り刃を研ぐとピカピカと光ります。
非常に細かいので仕上げ砥で凹凸を無くす事は時間の無駄使いになりますねぇ〜。
もしも鏡の様に美しく凹凸の無い切り刃にしたいのならば、中砥からやり直し!


荒砥、中砥、仕上砥と基本的な特徴と使用方法を再び簡単にご紹介しました。
この3種を使用する上で大切な事として、面直しが必要です。
荒い程減りが早く、砥石が反ってきます。研ぐ度に砥石の面を直す事で次回使用する際に手間がいりません。
反った砥石で研ぐと良い刃付けが出来ないので直しましょう!
中砥、仕上げ砥の場合、反っていると裏押し(裏研ぎ)の際に綺麗に刃が付きません!
変にしちゃうと中々直せない・・・。職人さんでしか直せないので注意してください。

ちなみにナイフシステムの砥石面直しは僕がしています。反りきってから直すと非常に大変で翌日
腕が上がらない程辛い状態になってしまいます。(決して貧弱な訳じゃなく、直す量が多いので!)

4、天然砥石(合砥)
仕上げ砥では物足りない・・・。もっと切れる刃付けをしたい!そんな方にお薦めの砥石です。
職人さんは、最終仕上げで必ず天然砥石を使っています。
皆さんが買った瞬間に味わう切れ味は天然で研いだ切れ味です。
(これは堺の包丁で上(青二,白二レベル)の包丁と考えて下さい。)
職人的使用方法は刃先を立てて研ぐぎます。この際、使用するのは合砥でも硬質の物であまり市販されて
いません。高いですよぉ〜!

5、ダイアモンド砥石
これは裏押し専門で使ってます。何故裏押し専門か!理由は砥石がフラットの状態が保てるから
です。硬い為に反りかえる事が無いに等しいので、繊細な裏の刃を付ける為にこの砥石が活躍して
います。

天然、ダイアモンド砥石は、言えばサーキット的な物です。車のサスを変えたりエアロを組むよう
な感じな物です。必要無いと言えば無いですが、持ってて損はしない砥石です!
包丁本来の切れ味、包丁の持つ実力を引き出したい方は是非お買い求め下さい!高いですが・・。


研ぎのワインポイントアドバイス!
1、研ぎたい場所の裏を押さえる!
  これが意外に分かるようで分からない事なのですが、「この凹みを無くしたい」と思った
  場合にその凹んでる部分の裏を押さえて重点的に研ぎます。
  それが刃先にある場合、包丁を押さえる手が砥石に擦れて指先が研げてしまい指に穴が開く
  事があるくらいです。 シノギ筋に近い所ならば包丁の背中に近い部分の裏を押さえる事で
  その部分の凹みが取れます。研いでは表を見て研いでは表を見ると言う作業が必要です。
  下記の写真は、刃先部分を研ぎにいってます。(このへんは中砥でやりましょう!写真は仕上げ砥デス!)

指の位置に注目!

2、研ぎにくい切っ先はどうすればエエんや?

  この部分は難しいですね!上手に研がないと鶴首(鎌首)のように切っ先がコンコルドの様になってしまいます
  難しい故に切っ先を研がない人が多いのかな?そんな包丁を修理などで良く見かけます。
  包丁のアゴから3分の2は意外に簡単に研げますが、先はどうしても砥石に当たらない、研ぎにくいと言う方
  は必見です。
  写真のように研ぎたい部分に指を置きます。この時、ほんの少しダケ肘(ひじ)を上げます。
  それによって、切っ先部分が意外に簡単に砥石に当たり研ぐ事が可能です。
  ちなみに写真の指で力が掛かってるのは、包丁の背に近い所です。
  シノギ筋が切っ先に行くにつれて背に抜けて行きますよね?言わば切り刃が広がる感じデス。
  この広がった切り刃に対して指も背方面に行きます。(分かりにくいかなぁ・・・。)
  一度やってみて下さい。ちょっと研いで表を見ればどんな風に研げているのか、今何処を研いだのか!が
  良く分かると思います。(このへんも中砥でやりましょう!その方が早い。写真は仕上げ砥デス!)

指は包丁の背に力が掛かってます。


3、裏押しの裏(笑)

  そんな感じで表が凹凸の無い綺麗な刃になったとしましょう!
  今度は裏押しです。包丁でとっても重要な部分でもある裏の研ぎ方です。
  マズ第一に砥石の面が平らでなくては良い裏押しができません。この時点で砥石の面が反っていたり
  すれば即、砥石の面直しをして下さい。
  通常の裏押しは包丁の裏をベタっと砥石につけて研ぎます。研ぐとチリチリっと表研ぎで出たかえりが
  取れます。これで完了です。
  写真@は通常の裏押しスタイルですよね。@の指位置は安全の為に包丁半ばにありますが、力は刃先に
  乗っています。押す時に力を入れれば刃先の裏が研げ、引く時に力を入れれば背が研げます。知ってます?
  *注意は押し過ぎると折角伸ばした刃を痛めますので程ほどにしましょう!気合を入れると欠けるかも!
  写真Aは先の裏押し方法!包丁を縦てに動かします。これで切っ先の裏が綺麗に仕上がります。
  丸い帽子みたいになりますよ!(これまた分かりにくいかも・・。)包丁はベタのまま角度を縦てにして下さい。
  肘を上げたら砥石に食い込みます。←かなりショックな状態を覚悟!

@通常の裏押しスタイル A切っ先の裏押しは縦て!

  おい!裏の裏の裏は何やねん(笑)なんですが、Aの包丁を縦に動かす事が、裏ワザなんです。
  しかし、ちょっと注意があります。@、Aは全然問題無い事で是非実践して欲しい事なのですが!
  
  裏押しで刃付けしない事をお勧めします。ハッキリ言って、裏を押せば刃が付きます。
  押せば押す程刃は薄くなって、まあ切れる包丁になります。これはメチャクチャ楽なんです。
  しかしこれを覚えると、包丁裏の比(裏の緩やかな凹みカーブかな)が無くなり、刃に力が無くなり
  そのうち使えない包丁になります。流石に個人ユーザーで裏の比を付けるのは不可能に等しいです!
  鍛冶屋の作業である程度付いてるもんですし、刃付け屋さんに持って行ってもタダでは直してもらえない。
  包丁を小さくなるまで大切にしたいと思うのならば、裏の比を大切にし、バランス良く研ぎを入れる事を
  お勧めします。  


やっとここまできました。糸引き刃の付け方!

 
本当はこの部分だけの特集にすれば良かったんですが・・・・。
段階を踏まないでコレをしちゃうとダメなので!長々と書いてしまいました。
折角、頑張って綺麗に刃を一枚にして、凹凸も無くし、仕上げ砥でピカピカに仕上げた包丁!
長い時間を費やして、俺は頑張ってきた。これで明日仕事にストレスなく料理が出来るぞ!
そうです、皆さんは頑張って研ぎ上げたのです。でも僕は酷な特集をしています。
でも、この糸引き刃を必要とする人が居るハズ、きっと理解してくれる人が居るハズ。
この糸引き刃に惚れてもらえると思って特集します。

糸引き刃は最終段階で刃先を立てて研ぎます。言えば2段刃にしていまいます。
「マジか?」「それは正解なの?」「職人さんはやってるの?」疑問は絶えないとおもいます。
「マジです。」「正解かどうかは職種によります。」「職人さんはやってます。」のお答えです。
職種によって、一発勝負のお店!例えば高級寿司店で一日にお客さんが3組で・・・と言うお店なら
糸引き刃はそんなに必要無いかもしれません。しかし、そうでない店では、沢山のネタを引きます。
料亭で沢山の刺身を引く場合もあるでしょう、水産加工、魚屋さんでは数え切れない魚を捌きます。
数をこなす為には良く切れて、切れ味が長持ちする包丁が最適です。(仕事中に欠けたら、ダルイ!)

そんな数をこなす方の為の糸引き刃です。2段刃にする事により刃先が強くなります。
特に、本焼包丁、白二鋼、銀三鋼、などの包丁は素材が硬い為に欠け易いと言えます。
青二鋼もありますが、上の包丁よりはマダましかな?
2段刃と記載していますが、髪の毛一本分の刃を付けます。見た目には細くキラっと光る程度の刃です。
では写真で角度と雰囲気を見て下さい。

色々な角度から撮影しました。結構立ててるのが分かると思います。
あまり立て過ぎると砥石に刃が食い込み悲しい結末が待っているのでご注意です。
動画にすれば分かりやすいのですが、力は必要ありません。撫でる程度ですねぇ〜。
音で言うならばシャ〜シャ〜と言った感じです。シャキンシャキン研がない様にして下さい。
写真は仕上げ砥ですが、職人さんは天然の砥石で写真より立てて研いでいます。(土井さんの動画参照)
職人さんは手が決まってる為に砥石に食い込む事なく軽やかに研いでいます。
しかも硬い高い天然砥石でやってます。
(これは僕の手です。写真右下の左手のブレスレットはマイナスイオンが出るそうですが・・。効果なし(笑)

裏押しも微かに必要です。(山梨の電話頂いたお客さん、やっぱり返りがちょっと出ます必要でした。すみません)


この後、Gパンか新聞紙で散髪屋さんの様にシャシャっと刃先を撫でれば完璧な刃付けが終了します。
この糸引き刃を付ける砥石ですが、仕上げ砥か天然合砥がお勧めです。←これが一番です。
天然を使用するとメチャ滑らかに仕上がります。
合砥はこの為にある砥石やと、僕は思ってます。切る部分に使うのが最適ですね!
切り刃を合砥で研いでも天然っぽく霞がかかるだけで切れ味に影響しないと思うんです。
見た目は美しくなるかな? でも合砥は高価なので刃先を研ぐ為に使用しましょう!
刃先だけ研ぐ事だけに使用すれば、そんなに減らない砥石ですし、大切に使えば長く付き合える砥石です!


究極に長い特集でした。ここまで読んで頂いた方は大変疲れたと思います。ありがとうございます。
今回のメインは糸引き刃でしたが、ご理解頂けましたか?必要ある方、無い方、いらっしゃると思いますが
白二鋼などで切れ味を長く保ちたい方、本焼が欠けるのが嫌だと言う方、千差万別?ですが、是非一度
お試し下さい。 質問、疑問はメールにてお受け致します。tatsuya@suisin.co.jp


来月は、工作特集にしようかと思ってマス。あなたにも出来る研ぎ台製作!予算は目標1000円だぁ〜(笑)


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