2004年1月期

謹賀新年!
あけましておめでとうございます。
本年も酔心をよろしくお願い致します。
昨年は酔心特集の閲覧が、かなり上昇しまして一日に100アクセス以上
あったりしました。(裏アクセス統計での結果です!)
今年も職人さんから得た知識や、情報、個人的に発見した見解などを沢山
アップロードして行きたいと思いますので宜しくお願い致します。

さて、本年一発目の特集ですが、去年に引き続きいて洋包丁です。
これはそんなに深い特集ではありませんが、こんな事もあるんだなぁ〜!の
特集です。それと、和包丁の幅について・・・。長いですよ(^^;

年末にとある展示会で酔心包丁を販売するとの事でしたので、見学方々伺い
ました。沢山のお客さん(本職の方、料理学校学生の方、主婦の方)と色々話
をさせて頂きました。ちょうど展示会場が京都で、京都料理展示会だったの
で本職の方の9割は割烹や料亭の調理師さんでした。

INOX本焼、銀三鋼などの印象を聞いてみたのですが、やはり「これステンやろ?
研いでも減らへんやろ!」の意見や感想が最も多かったです。ステンは切れない
と言う印象を持って居られる方がその内2割程、その他の方は研いで自分の好き
な形にならないから嫌やね!っと言う方が多かったです。いまどきのステン系は切れ
るのは解るけど・・・。これは寿司屋さんがエエやろうね!と言った方が多かったです。 
そう言った意見をおっしゃる方は親方関係?調理長のオーラがムンムンして、自分の
こだわりを持って居られる方がほとんどでした。
解ってるんやけど、俺はこの包丁を使うんや!っと言った感じでした。

そう言った事も事前に想像していたので、昔の白二鋼(幅が広い)や疾風を
持って行きました。いまどきの柳刃は幅が狭く自分がエエ感じや〜っと思っ
た時には幅が狭くなり過ぎると言った事が良くあるみたいで、この型エエな
と言って頂きました。以前の特集でこの話はしたかも知れませんが、和包丁
は研いで始めて包丁本来の機能を発揮します。包丁が3分程減った時に自分
の手にはまって、自分の道具として機能します。もちろん包丁自体も研ぐ事
で分子の荒れていないピュアな鋼部分が出てくるので本来の切れ味が出ます。


画像上が現行の幅で下が昔メインだった幅!
写真では大差無い様に見えますが、実際に見た感じや、重量感が全然違います。


長くなりますが、鍛冶屋でジュンっと焼き入れして、刃研屋がデカイ砥石で
がぁ〜っと研ぎますよね!そうすると外側には、焼き入れや焼戻しによる分
子構造の変わった部分がむきだしになります。刃研ぎ屋でそれを落とすので
すが、それも機械でガァ〜っと研ぐので分子が多少痛みます。結果完成した
全ての和包丁は、超究極の話本当の切れ味は出せて無いと僕は思ってます。

じゃあそれが、幅が広いのと狭いのでは何が変わるんや?と言う話ですが、
これは、実際に使用される調理師さんが時間を掛けて手研ぎする事にありま
す。手で研ぐと熱を持ちません(猛烈に速く研がない限り!)っと言う事は、
鋼の分子を壊さずにゆっくり自分の思った形に仕上げる事が出来ます。
自分の気に入る形にするまでに研ぎますからエエ感じに減ります。
そうすると熱に犯されない包丁内部の美味しい鋼が顔を出します!
その時に幅が狭いとすぐ小さくなってしまうのです。美味しい切れ味の時に
小さくなっちゃうんですね!

最近の包丁は初めから研ぎ込んだ形にして販売しています。
これは、手にはまる状態の形状を表向きダケ、形にしたと言う事なのです。
(補足:十分切れますよ!でも酔心特集では究極の話なのでご理解を!)
じゃあこの幅広で酔心は売ってるんかよ!っとなりそうですが、残念ながら、
包丁の幅は狭くなっています。社長も広い方がなぁ〜。っと包丁を見つめて
偶に呟いていますが、やはり売れるのは幅の狭い包丁なので、それらを販売
しています。逆に広いのを市場に出すと「なんやこりゃ」になりかねない程、
幅の狭い包丁がメインになっています。
しかし、幅の広い包丁を求める方の為に、酔心は、密かに持っています。
もし幅の広い包丁を研ぎ込んで使用してみたい方がいらっしゃいましたら、
tatsuya@suisin.co.jpにメール下さい。在庫の中からエエ状態の選びます!


和包丁幅、物凄く長くなってしまいましたが、展示会で得た僕の知識と言う
か教訓なのですが、前回洋包丁の研ぎを特集しました。その後での展示会だ
ったので、出品する包丁を更に研ぎ上げて持って行きました。
INOX洋包丁は#3000で研ぎ上げて、鋼系洋包丁は大平合砥天然砥石で、
ガッツリ刃を合わせて持って行きました。そこで事件が勃発!!!!!!!

とある調理学校の生徒さんが鋼の洋包丁を手に取っていたので、「ガッツリ
刃合わせましたよ!」っと話した所、その包丁を爪の上で引きました。
ななななんと!爪の上を滑るじゃぁないですか!!知ってる人は知ってます
が、爪の上を滑る=刃が付いていない!と言った事が通例です。
いわゆる基礎知識ですから、生徒さんは「ふ〜ん」っと言って笑みを浮かべ
ながら、去って行きました。「くっそ〜〜なんでやねん!」正直悔しくて、
その包丁を手に取って爪の上で引いたのですが、滑るんです。(泣)
しかし、刃を蛍光灯に透かしても綺麗に刃が付いているし、スポンジも切れ
るしエエ感じなんです。取り合えずその場で悩む事は止めて、後日会社に出
勤してその原因を追求に入りました。


上の砥石が大平合砥です。硬くて細かい砥石です。和包丁では裏押しや最終仕上げに
使用します。当たり外れが有る砥石だと思いますが、幸運な事に大当たりでした。
この砥石は、売ってと言われても売れない砥石です!!
下は当社の日本鋼牛刀です。この組み合わせが今回の悩みの種になったのです!


通例としてステン系は細かい砥石で研ぐと滑りながら切れると言う事が以前か
らの実験で実証されていますし、実際に食材を切っても滑りながら切れました。
鋼系は細かい砥石で研ぐと素晴らしい切れ味が出て天然砥石などで研ぐと、ビ
ックリする位の切れ味が出る事も実証されています。
じゃあナゼナゼ?鋼の洋包丁は滑ったのか????

答えは、和包丁と洋包丁の硬度と重量にありました。

和包丁の鋼の硬度は約63HRC〜61HRCです。(HRC=硬度の記号)洋包丁は
約58HRC〜52HRCです。硬い物ほど鋭い切れ味が出ます。そもそもの切れ込む理念
が違う事が判明! 硬度の低い物ほど少々荒い砥石で食材などを引っ掛けながら
切る方が良く切れる感覚を味わう事が出来ます。
逆に、硬い物は限りなく直線に近い刃を付ける事で、良い切れ味を出せます。
ちょっと上手く説明できませんが・・・。難しい事です。

重量としては、和包丁の柳刃よりも洋包丁の牛刀、筋引などの方が軽いと言う点
です。包丁自体は柄の重量も含むので重量感がありますが、刃自体は薄いので重
みは殆どありません。和の理念では、包丁の重みで食材を切ります。洋包丁は、
手で切りに行くと言う差です。細かい刃を付けた場合、包丁自体に重みがあると、
引くだけで重みによって切れ込んで行きます。洋包丁の様に柄に重心があるで、
切れ込みにくいのでは無いかと言う事です。

重みが少なく、硬度の低い洋包丁を和的理念で天然砥石で細かい刃を付けたので
すからもちろん爪の上を滑る現象が発生してもおかしく無いかな?っと納得して
います。万人が集まる展示会などでは、キッっと噛むような刃にした方が良いか
も知れない事を学びました。そこから先は、お客さんの顔を見て目の前で砥石を
当てるのがベストかなっと思っています。

結果、鋼の洋包丁もステンと同じ様に#3000の砥石で研ぐと良い切れ味が味
わえます。妥協しても#6000です。切り口にコダワリが無いなら#1000
の中砥でも良いかも知れません(ザラザラした切れ味ですが・・・。)
でも、包丁本体の切れ味は本当に良かったです。ただ爪の上で引く、切ってる感
覚を味わうには細かい砥石で研がない方が良いでしょう。
上記は、爪の上で引いてクックっと掛かる刃付けに付いてです。
今回僕が悩んだ事(細かい砥石で直線に近い鋸刃)は、実際に食材を切る時の切り
方によってもしかすると素晴らしい切れ味を出す事が可能かも知れません。
(往生際が悪いようですが・・。)

それと、これは酔心の鋼の洋包丁なので、全ての鋼の包丁が同じとは言えません。
もし、硬度の高い洋包丁があれば刃を細かくしてみるのも良いかも知れません。
ただ、洋包丁は全般的に薄い物ですので、硬度を上げると折れる欠ける可能性も
否定できません。厚くして重みを出すを切れ味が落ちますし・・・。
やはり包丁は奥が深いと言う感じです。


今回は、僕の体験談と特集を織り交ぜましたが、何かの時にお役に立てばと思い
ます。普通の調理師さんの業務では、ここまでこだわる事は少ないと思います。
ただ、特集した事々を知ってるとか言うだけで包丁の見かたが変わったり、使う
のが楽しくなればと思います。

特集もそうですが、今年も良い包丁を酔心包丁お求めの皆様にお届け出来るよう
本体(包丁屋業務)も気合を入れて頑張りまので宜しくお願い致します。

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