2005年11月期

更新が凄く遅くなりました。
色々と通常業務?が忙しく会社で椅子に座って記事を作る事
が出来ず・・・写真を撮る事も出来ず・・・。
しかしながら、忙しい事はとても嬉しい事です。(^^)

今回は、包丁の裏について少々お話をしようと思います。
裏から片刃の話へ!そして洋包丁の7:3へ!
表側のハマグリなどは特集済みなので、取りあえず表裏は完結か?

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■裏の基本的な事■

和包丁の裏はとっても重要です。
今回はこの包丁裏事情について特集を進めたいと思います。
ここで話す和包丁とは柳刃、薄刃、出刃などの裏に凹みが
ある包丁の事と考えて下さい。

さて、「裏の凹みは何であるんや?」っと思っている方も
居られると思いますので・・って既にご存知かと思いますが、
裏側に切った食材が貼りつかない為にあります。
摩擦による切れ味低下を防ぎます。
また、凹みがある事で裏側の刃がきちんと砥石に当ると言う
事も言えるでしょう。

この凹みの基本は鍛冶屋さんで付けられます。研ぎ屋さんは、
鍛冶屋が作った凹みに合わせて黒い部分を研ぎ取る程度しか
研がないようです。

土井さんの工場にある金床!
このカーブが包丁の裏比の基本になる!
桁槌と金床!

凹みの深さは、柳刃、薄刃、出刃とそれぞれ違いがあります。
刃付け屋さんが裏側を研ぐ時の事として柳刃よりも出刃の方が
円周?が大きいので、水砥の大きさを変える必要があります。

小さい砥石で大きい出刃を研ぐを、凹みをえぐってしまう感じ
になりますよね?(解りますか??)
そうすると、裏側に付いている鋼を削り取る事になってしまい
包丁を真中まで研ぐと鋼が小さい(薄く)なってしまいます。

本質的に良い研ぎをする職人さんは、砥石の大きさをみて納期
を伝えて来られます。「今、砥石が小さいから待ってくれ!」
っと言った事を言われます。

そんなのお構い無しに研ぐ人は、強引に研いでしまいます。
その職人さんは、「最後まで使う人なんて居らんやろ・・」
っと言う持論があるようで・・・。
某職人さんが「たっちゃん、こんなん言うヤツ居てるねんで・・」
っと嘆いていました(^^; 

お持ちの包丁で使い込んで鋼が減ってきたら・・そういう事かも。

職人さんと、そんな話しをしているかと思えば、昔は鋼が小さかった
と言う話しに飛びました。 昔は裏を強引に研ぐ人が居なかったから、
鋼が薄かったようです。今は強引に裏を研ぐ人が多いから鋼が厚く
なったらしいです。「そもそも鋼なんてちょっと出てたらエエねん!」
っと言われていました、なんで?っとなりますが、切る部分(鋼)が少し
あれば良いとの事、「鋼少ない方が研ぐの楽やで!」っとの事・・・。
まあ・・そうなんですけど。 昔話も色々と聞かせていただきました。

■裏押ししたら裏の刃が波打つんですが■

砥石で裏押しした場合、裏側が波打つ場合があります。
また、切っ先やアゴ裏の辺りで砥石に当らない部分が出てきたり
する事があります。 なんでやねん?にお答えします。

使用されている砥石面が面直しされていて完全フラットの状態で
包丁に歪みが無い場合のお話です。

冒頭で書いたように、裏側を大きい水回転荒砥石で砥ぎます。
この荒砥の目をバフで消すのですが、バフの方がより包丁の仕上がり
に対してダイレクトに影響するようで、この作業を丁寧にしないと、
裏側を蛍光灯で透かした時に裏側がボコボコになったり、裏押しで綺麗
な裏刃が出なかったりします。

この裏がボコボコなったのを気にしない人も居れば、気にする人も居ます。
裏押しで砥石に包丁が当らない部分が出るような物はOUTですが・・。

多少の波打ちは、ある程度使えば、安定してくるように感じています。
新品から綺麗になっているのは、少ないような気が・・・。

しかし、高価な包丁になると裏が恐ろしく綺麗に当ります。
10万円前後の包丁ならば、裏が綺麗に付けられていますねぇ〜。
3万円4万円の価格帯で良い裏が付いてる物もありますし、
屋号の信用と言うか何と言いましょうか・・・。

深い話しは、個人的にお会いできた時にでもゆっくりと・・・(^^;

包丁選びの際に一番気を使うべき場所は、裏側かも知れません。
表側は、研げますから多少ボコボコでも時間を掛けて研げば何とか・・。
裏側は裏に比がある和包丁の場合、研ぎたくても研げないですし!


■裏押ししたら、峰側と刃先側の幅が一定にならない■

これは研ぎ方にあります!しかも意識的にでは無く、無意識な世界で
危険を避ける為に、そうなります。(笑)←僕だけかも・・。

裏側を研ぐ時は刃先を向こうに向けて、峰側が自分の方を向いています。
写真を見て頂ければ解るように、向こうへ押したり引いたりして研ぎます。

包丁は、砥石に対して引かれる時に良く研げるような気がしています。
表を研ぐ時も、押すより引く方が研げる気がするのは僕だけでしょうか(^^;

裏側の話に戻して、前に押す時に力を入れると刃側が良く研げます。
引く時に力を入れると、峰側が良く研げます。
ただ、前に押す時に力を入れるのは危ないと言う本能が働くかも知れません。
包丁が砥石に張り付いて指だけ前に行って、後から包丁が追いかけてくる・・。
砥石の泥でヌメリが出ていると余計に滑りますし・・・。
また、指だけ前に行って下さい、っとばかりに切り刃が良い下り坂に(^^)

 


そうなると質全的に引く時に力を入れてしまいます。
シノギ筋に指が掛かるので余計、引く時に力が乗ってしまうのかもです。

その事を意識して、砥ぐだけで峰側と刃先側の裏幅が均一になるかもです。

引く時に力を入れると、峰側が広くなってしまいます。
押す時に力を入れると均一になると思います。(僕は均一になります。)



■木砥目の事■

普通の包丁には、裏側に木砥目(斜めの線、縦の線)が入っています。
この斜めと縦の違いを紹介!

これは、霞(鍛造)の包丁に良くみられる事で、鋼切りの方法によって変わります。
白二鋼のように、裏側に細工が無い場合は斜めに木砥と当てるようで、青二鋼
のように、波々と模様を入れる場合は縦に木砥を当てるようです。

後ろの模様を綺麗に出す為に縦と斜めが区別されるようで波々模様は斜めに
木砥を入れると綺麗に霞まないようです。

縦に木砥を入れると、裏の凹凸が際立つので下準備が重要になります!
よって、青二鋼に本霞研ぎが採用させていて、他よりも高い研ぎ代金が必要に
なるのではないでしょうか!!

修理などで返ってくる包丁は、皆さん縦にクレンザーなどで磨かれています。
縦に木砥が入ってる方が後のメンテナンスが楽なのでしょうか??

前に特集で書きましたが、霞研ぎと本霞研ぎでは裏側に当てる木砥の金剛砂の
番手が違います。もちろん細かい方が空気に触れる面積が減るので、錆びに
若干強くなるかなぁ?? 細かくすると凹凸も目立ちますしねぇ〜〜。
やっぱり、綺麗に仕上げる包丁は、細部にまで手が入ってます。

青二鋼の縦木砥目!
裏比に映る蛍光灯が美しくカーブを描く!!
白二鋼の斜め木砥目!
こっちも蛍光灯を映せば良かった・・。


■裏の比を無くすと■

冒頭で案内したように、裏の比が無くなると食材との摩擦によって切れ味が低下
してしまいます。嘘か誠か、裏の比を無くしてしまうと刃が強くなると言う噂も・・。
裏をベタにしたら研ぐのがしんどくなりそうな気がしますが・・・。
ほら、砥石に密着しちゃうと思いません?

正直に言いますと、裏側から研げば刃を付ける事ができます。
メチャクチャ楽なので、忙しい調理師さんは裏側からガンガン研ぐ傾向にある
ようです。それに対応して、裏の比が大きい柳刃や出刃もありますが。
関東の調理師さんはそういった傾向があると聞いていますが、どうでしょう?

包丁屋さん的には、ガンガン研いで裏の比を無くして新しい包丁を。。。(^^)b
「そんなん、裏スキしたらエエやん!」っとなりそうですが、裏スキするにも鋼が
しっかり入っていれば良いのですが、鋼が薄い(薄くなってる)と裏スキが出来ない
裏スキやったら軟鉄が出てきたり・・(^^;するかも知れませんし・・。

例え鋼が沢山入っていても比を大きくするために裏を多く研ぎ込んだら薄くなって
ると言う危険もありますし・・・。
鋼が薄くなると、包丁に出る刃が少なくなります。
霞(鍛造)包丁の構造をご存知ならご理解いただけるかと・・・。

何かネガティブな事ばっかり書いてますが、知ってるのと知らないのでは変わって
きますので、何となく気に留めて頂ければと思います!

参考写真として、裏ベタ押しの包丁が無かったので撮れませんでした。
アイケの包丁を裏ベタにしてみようかと思ったのですが、尋常じゃない時間が必要
な気配がしたので、諦めました(^^;

 
目がチラチラしますが、作ってみたのでフラッシュ貼ります。


■片刃の威力■

裏の話しをすれば、片刃の話しをする必要が出てきます。
裏に比がある包丁=片刃の包丁になります。

片刃は何故に鋭いのか!どこかに書いてそうなテーマですが、職人さんと話した
際の見解を紹介したいと思います。

基本的に、よ〜く切れるようにしたければ薄く研げば抵抗も少なくスパっと切れます。
両刃で薄く研げば両方から研ぎ込んで行く事になり、薄くすれば、薄くするほど、
刃が弱くなりヘロヘロ(刃が波打つ)ようになります。
そうなると両刃で薄く研いで鋭くする事は難しくなってしまいます。

片刃は、薄く研いでも(程度問題ですよ!)片方に厚みがあるので、薄く研いでも
片方の厚みによってヘロヘロになりにくいと言えます。

言葉で表現するのは難しいですが、両方から薄く研ぎに行くのと、片方から薄く
研いで、裏側からフラットに押さえる事でヘロヘロにならなくなる。(??)

うがぁ〜〜説明できない自分がモドカシイ(>0<)

それと、摩擦の軽減によって片刃が鋭く切れる感覚になります。
両刃の場合、両方の刃面が食材に当っているので、張り付きによって切れ味が
低下したような感覚になってしまいます。
片刃は先ほど言ったように、裏側の比によって摩擦が軽減されるのでスムーズに
刃が食材を切り抜けて行きます。

また、片刃は切刃角(シノギ筋〜刃先までの斜角)の影響で、片方に切れる運動
が集約されるのではないのか?っとも勝手に思っています。
飛行機の羽が空気を切り裂くように、揚力的な感覚ですが・・・。
↑これは完全に個人の妄想なので見逃してください(笑)多分間違ってます。


少し話しが離れますが、ハマグリ刃も上記の一種で、片刃を薄く研ぎ込む事で
刃が弱くなる事を防ぐ効果があります。本当はシノギ筋から刃先まで一直線に
研いだ方がウルトラ級に良く切れます。
しかし、そうすると切り刃に食材が張り付きやすくなってみたり、刃に力が無くなっ
たりする事が考えられます。このハマグリ刃に関しては去年の12月期を参照で!


■和製洋包丁の7:3&8:2■

日本の洋包丁は、7:3か8:2の刃比率があります。
これは日本の伝統(片刃が鋭い)っと言う理論を洋包丁に採用した結果です。
普通、西洋包丁は5:5の両刃が正統な流儀のような気がしています。
どうして、5:5の両刃が正統で通ってきたのかと考えると、研ぐと言う習慣も無く、
スチール棒でシャキシャキするだけですし、料理から考えても叩き切る、刻む作業
に徹しているように思います。5:5で強くする為に包丁が厚いのかとも・・・。

叩く、刻むならば、両刃の方が断然上で片刃にするよりも刃が強いですし、
刻む程度ならば、刃に食材は張り付いての切れ味低下なんて関係ない!
料理の事はイマイチ分かってないのですが、刻む叩く以外にステーキ肉を
切ったりする時には、長い距離を真っ直ぐ切る必要があります。
この時、片刃よりも両刃の方が真っ直ぐ切り易いと言う事があります。
また、切り口が多少荒くても焼く、煮るので問題なし!

この包丁を鋭くしてやろう!っと思えば薄く研ぐ事になりますが、上記に書いて
きた様に、両刃を薄くするとヘロヘロになってしまいます。

それ以外の方法で鋭さを出してやろう!っと思った時、片刃気味に刃付けを
行う事で、簡単に鋭い切れ味を出す事ができます。すごいぞ日本!!

また日本の洋包丁は薄いので、両刃にしない方が良いのかなぁ〜っとも
思っていますが、ハマグリ的に刃を付ければ結構良いんです。
過去に特集で洋包丁のハマグリをやりましたが、結構強いし面白いように切れる。
ハマグリ・・・すごいぞ日本!

洋包丁のハマグリも去年の12月期参照で!


今回はこの辺りで終了します。
何か上手く説明できなかった部分も多く釈然としないのですが、
何と無く雰囲気だけでもご理解頂ければ幸いです。(^^;
裏の重要性と日本が生んだ片刃の威力を感じながら包丁に触れてください。

砥石の日のイベントレポートと年末天然砥石プレゼント応募関係
クリスマスギフトに如何でしょう的な家庭用文化包丁の提案!は近日更新します。


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