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関節解説

包丁の関節について

関節と言う表現についてですが、解りやすく解説してゆきます。

関節とは、研ぎ角によって出来る切刃構造内の目に見えそうで見えない角度変化です。
見る人が見れば見えますが、仕上砥石に当てた時にしっかり存在を感じる事ができます。
中砥石や荒砥石だと、砥石の泥が上手く関節を隠してしまいます。

で、研ぎ角は製造工程時の刃付屋さんで出来ます。
違って解釈されては困るので、細かく書きますが、研ぎ角を変えなくても研ぎ上げる事
が出来る包丁(鍛冶屋からの地)も存在します。
そのような包丁で無くても、研ぎ角変化を極限まで無くす研ぎが出来る刃研ぎ職人さんも存在します。
基本的な、包丁は切っ先アールや刃元から刃先に向かってのテーパー形状で研ぎ角変化が必然的に
出てくるので、超細かい事を言わない限り正常な事だと認識してください。
包丁は2Dではなく3D構造です。

研ぎ角が変わる部分と言うのは、切っ先アールより少し下の部分と刃元部分になります。

どうして研ぎ角を変えるのか!っという疑問にぶちあたります。

◆一番の要因は、刃元から刃先に向かって薄くなっていく構造を作る為。
そんな事なら、元から先まで均一に、研ぎによってテーパーを作れば良いじゃん!
っとなります。実際そうなっているのですが、これに付属してくる案件がもう一つ、
刃肉が先に向かって薄くなっていくのに、切刃の幅を均一に合わせなければならない事
が出てきます。 続に言う先抜けを作る作業が加わってきます。

細かく書くと、刃身が先で薄くなっていくのに、切刃を広げる工程が加わるわけです。
どうやって広げるの?っと思う人の為にもう一段階踏み込むとシノギ筋側へ広げに行くんです。

この切刃の幅合わせと先抜けを作る為に、角度を操作します。

これを解消する為には、刃元から先まで同じ厚みの板で刃を付ければ解消されるかも知れません。
しかし、それは庖丁と言う道具として使いにくい物になります。
酷い言い方をすれば、鉈のように切っ先が異常に重た~い包丁になってしまいます。

上記が、関節(角度変化)が出来る(作らなければならない)理由です。


極端な例ですが、先丸蛸引の切っ先を例にしました。
こんなに直線では出ませんが、研ぎ角度変化による関節のイメージです。
先は先!って感じです。

さて、この関節がどんな悪影響を及ぼすか!です。

切っ先~切っ先アールの始まり 刃の中腹 刃元 と三分割して研ぐ事で新品の包丁形状を
維持する事が出来ると思います。 言い換えれば、研ぎ師が研ぎ出した角度を追いかけて、
僅かに出来る角度変化の天辺を、上手く研ぎ妖かして整える事です。

この研ぎ角の変化を気にしないで強引に研ぎ取っていくと、ツル首になって刃筋が真っ直ぐの
包丁になります。また、切っ先付近のシノギ筋周りが砥石に当たらない為、角度を無視して
強引に研ぎにいって切っ先アールを崩すパターンもあります。
切っ先アールが無くなった頃に、切っ先付近のシノギ筋周りが砥石に当たると言う感じです。


写真の庖丁は、黒実線に関節がある訳ではありませんが、こんな感じで出る事が多いです。
これが出る場所は、研ぎ師さんによって違いますし、個体差がありますのでイメージと思って下さい。

強引に研ぎ進めると部分が残ってツル首になってしまいます。
写真の庖丁もシノギ筋辺りに、砥石が当たってない部分があります。
研ぎ取る方法もあるんですけどね。。。それを、他の人が研ぐと追い切れない可能性があるので
研ぎ届く範囲でそのままにしています。

僕は、新品の庖丁を研ぐ機会が一番多いので、形状を一切崩さずに納める使命があります。
なので、刃研師の角度を意識しつつ、お客さんが出来るだけ意識しないで良いように!っと
いうか、角度変化を極力滑らかに研ぎ取って出す努力をしています。(本刃付けの事デス。)
”僕の出来る範囲でのガイドライン作りですね!”
僕にとっての関節が与える悪影響は、形状を維持する為に邪魔になる物。。でしょうか・・・。

ちなみに、この関節ですが、角度変化が起きている所を全て研ぎ取らないと、ずっと続くかと
思っています。研ぎ取るとは、切っ先部分なら短くなるか、刃筋が真っ直ぐになるか!です。
これは、包丁の個体によって変化するので、断言できません・・・。

調理師さんとっても同じで、新品の形状を維持したいけど、形状を崩してしまうっと言う
悪影響になるかも知れません。だんだん関節から形状の話に変わってしまいました、、
むしろ、関節の向こう側の話になっていますね・・・。

さて、この関節(研ぎ角の天辺)がどんな悪影響を及ぼすか! ですが、僕個人的には、
綺麗な研ぎ面が出来ないっと言うのが一番です。仕上げ砥石で研ぎに掛かった時に、関節で
滑らかさを邪魔されるのが一番です。趣味で庖丁研ぎをされている方なら、切っ先アール部分
を綺麗に仕上げたいと思っている人が多いと思います。

調理師さんの場合は、この関節がどのように影響するのか、ハッキリ言って解っていません。
盛り上がった関節が切るのに邪魔なのか?←いや、和包丁は裏で切るんだから関係ないか??
綺麗な切っ先アールが出ないのが、調理の邪魔になるのか・・・?

ただ、良くネットの写真で見るのは、切っ先は切っ先で研いで、刃腹は刃腹で研いでと研ぎ
分けている方が居ます。関節がある場所は角っとなっていたりするので、あれが使いにくく
なければ良いですし、もしかすると滑らかなアールが欲しいけど、あのようになっているの
かも知れません。滑らかなアールが欲しいと言うならば、関節は邪魔している訳ですし・・。
関節を見つけて、研ぎに掛かって、研ぎ過ぎて形状を変えてしまう事もあるかも!!
でも、別々に研いでいる人は、構造が解ってるか、先で海苔巻を切るのであえて、切り易い
(貼り付かない)ように形成し直しているのかは不明です。

色々なパターンがあるので、把握しきれません。

話があっちこっち行きましたが「関節」とは、この事です。

上記に書いてきた事で「ん?」っとなる人も居ると思います。
そんな事しなくても、綺麗に研げている人も居ると思います。
研げている人は、自然に?本能的に順応して研ぎを行っていると思います。

色々ご意見があるかとも思いますが、現時点で僕個人では、このように感じています。

ちなみに、この関節とテーパーを工夫して、形状維持と研ぎ易さを考えた研ぎを
施した庖丁が、伝承や本霞プラスになっています。
買う時は、同じ庖丁かも知れませんが、1年後2年後に違いが解ってきます。
一応営業しときます。 (^^)b

日々修行 2013-06-21


ありがとうございます。

 何だか、無理を言ったみたいで気が咎めておりました。

わかりやすい説明を頂き、本当にありがとうございました。

個人的には、私は「間接」は目に余らない限り、いじりませんね。

頭に血が上って、無理やり研ぎ落としてダメにした包丁は数知れません。

若い頃は、勢いに歯止めが効かないもんですね、何事も。

いや、さすがは青木さん、打てば響くとはこのブログの事です。

また、寄らせて下さい。


関節の話ご苦労さまです。+質問です

関節の話、自分で「あぁ、あれか!」と思い返してみると、安い包丁に多いなぁと感じました。
和庖丁ならベタ研ぎを毎回なされていれば自然に消えていくものでしょうか?
洋包丁は腹の部分、最悪刀身全体の研ぎをしなきゃいけないでしょうか?それと、えくぼ(ホローグラインド加工は除く)も一種の関節何でしょうか?

ご回答くだされば助かります。


Re: ありがとうございます。

lovekidold さん

コメントありがとうございます。

上手く表現出来なかった部分もあって、遠回りしながら書いてみました。。。

そうですね、関節を見つけた時に、どう対処するか!で大きく変わってくると思います。
僕も、かなりの包丁を研ぎ潰しました・・・。

研ぎながら気が付くことが出来れば良いのですが、研ぐ方に気が入ってしまいますね。。。

この構造を刃研ぎ師さんに教わってから、本刃付けスピードが早くなりました!
結果は同じなんですが、そこに行くのが早くなった感じです^^

こんな好き勝手なブログですが。。また訪れて下さい。


Re: 関節の話ご苦労さまです。+質問です

狛犬さん

コメントありがとうございます。

和包丁なら、ベタ研ぎで研ぎ進めると、関節が取れますが形状も変わります。
自然に取れると言えば取れます。
平面の砥石で研ぎ進めると、平面に従って真っ直ぐな刃筋になって行きます!
しかし、先の尖った三角形の形状になると思います。これも、ひとつの答えですね^^

切っ先アールなんて、平面の砥石からすれば単なる出っ張りですからねぇ。。。
そこから研げていくので、形状を維持するには、そこを守りながら研がなくては!です。

関節がある包丁は、構造を研ぎ直さないと形状維持が出来ません!

洋包丁ですが、良く解ってませんw
説明出来るほど、真剣に向き合った事が無いのが実情ですが、
どんな風に研ぐか!で、変わってくると思います。

僕は、洋包丁をベタっと砥石に当てないので、多少の揺れは気になりません。
例えば、洋包丁に片刃のような鎬筋を立てようと思えば、関節っぽいのに出会うと思います。。

エクボですが、、僕の中では関節ではありませんが、、関節と同じように
無理に研ぎに掛かると、包丁の形状を崩す原因になると思っています。

エクボの凹んでいる部分に、切刃全体を研ぎ込んで凹みに合わせる研ぎを
すれば良いと思いますが、どうしても凹みだけを狙ってしまう傾向にあると
思うんです。 5%のエクボ部分があれば95%の正常部分を研いで平面を
作るのが基本なので、この正常な95%を研ぐ時間と、それに伴う砥石の面
直し、気力が必要になってきます。

悪いエクボだと、刃を破って研がないと届かない物もあるので、エクボを取る
為に、包丁を研ぎ減らしたり、それで形状を壊したりするぐらいなら、エクボを
残して、しばらく付き合うのも、道具を経済的に使うテクニックかも!です。

エクボは製造上仕方がないので、出来るだけ良いエクボの包丁を選ぶべきです。


No title

始めまして、アキと申します。
プロの砥師のブログ毎回大変参考に成ります(実際は、私は腕が悪いので説明通り砥げませんので参考にまで成っていないでが)
関節は「切り出し」の様な形状だと無いと思いますが(ベタで砥いた使い込んだ出刃や柳が切り出しの様な形に成った包丁良く見かけます)
普通包丁は、上の「先丸蛸引き」の写真の様な関節の頂点を均して曲面にして目立たない様にして有ると思いますが、新品の柳.出刃をベタで砥いたら、元の刃線形状を変えないで関節が無い平な砥ぎは出来るのでしょうか?
蛤刃も鎬から刃先にかけて出来る関節を均して曲面にしてあると言う解釈でよろしいのでしょうか?

Re: No title

アキさん

初めまして、コメントありがとうございます。

ブログ研ぎの説明等、、私の説明が上手く出来ない部分が大きいかと思います。。
なかなか、研ぎの説明は難しいです。。 国語力の問題ですねw

さて、おっしゃる通り、関節の頂点を均して目立たないようにしています。
また、反った砥石だと、自動的に関節が均されます。 ←ナチュラルハマグリです。

ハマグリ刃も、おっしゃる通りでシノギから刃先までの曲面を砥石で均す感じです。

新品の、柳刃、出刃をベタで研いだ場合、元の刃線形状を変えないで切り出しやカンナ
のような平らな切刃を作るのは無理です。

庖丁を置いて、砥石を動かす(砥石と庖丁が逆転)したら出来るかも知れません。


コメント有難うございました

コメント有難うございました。
誤解を招く書き方失礼いたしました、そちらの解説が役に立たない訳では有りません、私の腕が悪いのでその様に砥げないだけです。
マジシャンMR.マリックが、幾らネタをバラシても素人がその通りできる訳じゃなし構わないと以前TVで言っておりましたが、プロの仕事は全てその通りだと感じます。
簡単に出来るのならプロ等必要無いわけでして、これからも出来るだけ秘密を公開して下さい。

Re: コメント有難うございました

アキさん

コメントありがとうございます。

昔から考えると高速インターネットな環境が出来たので、動画での説明も
加えていくのが良いかなぁ~ っと思ったりしています。

一番良いのは、現場で見て頂くのが最良かも!です。

色々秘密??はあるんですが、言うべきか言わないべきか悩みながらですw


No title

今更ながらに記事を読みました。
関節の定義がやっとわかりました・・・(^^;)
なんとなくですけど・・・。
僕の理解では、テーパーのある和包丁は不可避的に関節がどこかしらにできてしまいます。
そして、切っ先から砥ぎ進めると刃元に、刃元から砥ぎ進めると切っ先手前に、意図的に角度変化を付けながら砥ぎ進めると真ん中辺り?にそれぞれ関節ができる・・・。
これってあってますでしょうか~?
そして、テーパーを無視して切っ先から同じ角度で砥ぎ進むと鎬が刃元に行くに従って広くなってしまい、刃元からやるとまあ、鶴首ができあがるってことになるでしょうね・・・。
で、なるべくキレイな切刃の面を作ろうとした場合、比較的簡単なのは、刃元から研ぎ上げる方法のような気がしますが、切れ味(捻りが食材を切り広げていく)を考えるとやはり真ん中辺りからだんだんと角度変化を付けていく方がいいような気がします。
でも、結局、切刃は、最終的にはベタには当たらないので、ごまかしで切刃を化粧するかとても柔らかい砥石で関節を見えなくするか・・・ってことになるような気がするのですが、この理解で正しいでしょうか~?

パーフェクト!

iseさん

コメントありがとうございます。

そうですね関節について、おっしゃる通りで間違いありません。

綺麗に研ぐ事を考えると刃元から研ぎ抜いた方が折り合いが付き易いです。
ただ、使う事を考えると、刃元で折り合いを付けた方が抜けが良くなる印象があります。

または!反った砥石で研ぐと関節に出会いにくくなりますww
オートマチックに切刃を捻じって研いで行けるような・・・。

鶴首は、切っ先アールとの関係も絡んできますね(^^)

イメージして研ぐと綺麗に仕上がりやすいです。


更なる疑問・・・

お答えありがとうございます。
理由がよく分からないのは、「綺麗に研ぐ事を考えると刃元から研ぎ抜いた方が折り合いが付き易いです。 ただ、使う事を考えると、刃元で折り合いを付けた方が抜けが良くなる印象があります。」という下りですが、刃元から砥いで切っ先付近で折り合いを付けた方が、切っ先で切り開くイメージになって良いような気がするのですが、実際は違うんですかね?
刃元で関節(角度変化)を付けた方がいいということは、刺身を切ったりする場合、刃元から切り込みを入れるってことが前提だからですかね?
そう考えると、もしかして、その人の使い方によって、切っ先を多用する人は、切っ先付近に関節を、中程を多用する人は中間付近に関節を、という具合に使い方との相関関係になるのでしょうか?

Re: 更なる疑問・・・

iseさん
コメントありがとうございます。
そうですね、実際切っ先に向かう方に切り開きの力を持って行った方が良さそうですが、
現実は切れ抜けが悪い感じになってしまいます。綺麗に研ぎ出したいだけなら、切っ先へ関節を抜いて行けば良いです。
その変わりに、切っ先はやや厚く(切刃が狭く?)なると思います。

刃元で関節折り合いを付ける件ですが、仮に柳刃庖丁の場合は包丁を持った時、峰に指を乗せた時に、
指先よりも下側(刃元側)から切り始める事が少ないように感じています。

それならば、切る作業に影響の少ない刃元に関節を!! 出刃も同じですね(^^)

問題は薄刃です。。切っ先で打ち物、刃元で剥きとなった時に難しい事になりそうです。


難しい・・・

だいぶん、難しい話になってきて、僕の理解を超えてきました・・・σ(^◇^;)
刃元からの方が切り抜けが悪くなるというのは、捻りの問題より、切刃の角度問題ということでしょうかね~?
関節が刃元にあっても刃先はきちんと研ぐので切れ味には影響しないという理解だったんですが、多少は何か影響があるでしょうかね・・・(^^;)
薄刃の場合、捻りってもしかしたら桂剥きとかの時に邪魔になるかもしれませんね・・・。
そう考えると、そもそも酔心の本霞プラスとかってどういう刃付けになっているんですか?
想像がつかないのですが・・・(^^;)

Re: 難しい・・・

iseさん
コメントありがとうございます。
精度のある砥石で、精密に研ぐと捻りが問題になってきます。
ベタ~っと砥石で当てると、この捻りの大きい部分に間接が出来ます。
切刃全面を綺麗に当てようと思うと、刃元から切っ先に研ぎ上げて、
切っ先の切刃角を刃元と同じようにすれば、良いという考えです。そうすれば、切っ先の角度が鈍角になるので、切れ抜けが悪くなります。
なので、切れ抜けを重視する(使用重視)なら切っ先から研ぎぬいて、
刃元で折り合いをつける方が、良いと僕は思っています。

人間の順応力とは素晴らしいもので、捻った庖丁でも皆さん上手く使っています。
勝手に身体や庖丁使いを合わせて、綺麗に仕上げていきますね~。
これは、決められた動きしか出来ない機械には出来ない事です。

本霞プラスの刃付は、実際に手に持って、砥石に当ててみないと解りません。
使う事、研ぐ事の両方を考えたら、コレしか無いかも知れません。
デメリットは、研ぎ出す職人の手間が増える事だけのような気がしてます。。。

*職人さんありがとう・・・っと頭が下がる思いデス。。。


なるほど・・・

了解しました~。
だいたい理屈は分かりました!(ロ_ロ)ゞ
だから、ちゃんと砥げるかと言われるとそれはまた大きく違う話で、これから精進したいと思います!
ありがとうございました~!<(_ _)>

Re: なるほど・・・

iseさん
コメントありがとうございます。
なんだか、悩ませてしまってスミマセン(><)
僕個人としては、誰でもちゃんと研げる包丁作りを目指しています。
また、何かあればご相談下さい!