鋼化する軟鉄
本焼と打物(合わせ)どっちが良いの?
そんな事を良く聞かれます。
単純に本焼きの方が良く切れて長持ちするので切る事だけを考えれば本焼の方
がエエと思います。 そのように答えます。
「じゃあ何で、本焼がエエの?」「同じ鋼材を使っても本焼きの方がエエと言う理由は?」
そんな話に発展します。
どちらにしても良い包丁を作るには、低温で造るべきです。
低い温度で熱した鋼は叩いてもなかなか伸びません。
だから何回も叩かなくてはなりません。叩くと分子が砕かれて細かい組織になり・・。
本焼の方が、鋼のみなので、打物よりも多く叩かなければなりません!
打物は半分が軟鉄なので、伸びやすい(成形しやすい!)。
これは特集とかに細々と書いてあるので、興味あればどぞ!
もう一つの理由としては、軟鉄が鋼の炭素を吸うと言う事。。
打物は軟鉄と鋼を鍛接してあるので、炭素含有率の少ない軟鉄に鋼から炭素が移って
軟鉄が鋼化します。 これは高温で接合した場合に起こります。
鋼には、炭素が約1.0%程しか入っていません。 100g中1gの計算です。
(鋼材によって含有率は色々です。 これは例です!!)
ほんの少しの炭素が移行するだけで、鋼の切れ味に影響が出る事は容易に考えられます。
良い包丁の選び方に、表側の軟鉄と鋼の境がハッキリ出ている物と言われますが、
これはそうゆう事です。 ハッキリ出そう(低温で造ろう)と思えば思うほど、
アイケや裏の地合いが開く原因になってきます。
要するに、鋼から軟鉄に炭素が移行していない!(移行率が少ない??)
だから、鋼に炭素が残っていて鋭い切れ味が出る包丁となる(硬くなる!)と言う
事なのかも知れません。
アイケも一ヶ所だけはマズいですが、線になっている物は見た目は悪いけどエエ
のかと思っています。 古い鍛冶屋さん曰く、裏側の地合いが開いている包丁は
良く切れると言われた・・。と話していました。
久しぶりに、少し鋼の事を書いてみました。
- 2009-06-08