本焼きの長切れについて。
特集別誂カテゴリーでの記事です。
刃付屋さんと話した本焼が長く切れると言う一つの理由。
霞は、軟鉄と鋼を合わせて作っています。
本焼は鋼のみで作っています。
切る部分は同じ鋼なのに、本焼の方が長く切れるのはどうして??
軟鉄は、炭素量が少ない鋼材であって、焼入れ焼き戻しに応じません。
炭素とは、包丁に最も必要な要素で不可欠な物です。
この炭素が、炭素量の多い鋼から 炭素量の低い軟鉄で移行するのでは?
っと言う話です。 言うなれば、軟鉄が鋼の炭素を僅かでも吸う!
だから、切る部分が同じ鋼でも霞の鋭さ等よりも、本焼きの方が上になる。
っとの考えです。
これは、科学的に実証された訳ではないので、想像の範囲を超えません。
そんな話の後で、鍛冶屋さんと話す機会がありました。
試行錯誤されている鍛冶屋さんなので、鍛冶屋ならでは明確な意見?理由を受ける事ができました。
いい包丁を作る条件としては、包丁に与える熱が最重要視される。
鋼は精錬される時に1度熱を経験している。
もう、これ以上熱を与えたく無いのが本音だけど、包丁の形にする為には熱して鍛錬する必要がある。
霞と言うのは、軟鉄を付ける作業がある。簡単に思うが、本焼よりも難しい作業。
低温で火造るといえど、それなりの温度でないと綺麗に接合できない。
(土井さんが造る包丁は、低温にこだわる為、アイケなどが出やすい。でも、鋼を労っての事。)
本焼は、温度を上げないで淡々と叩いて伸ばすだけで包丁に整形できる。
(高温にすれば、早く整形出来るけど、形を造るでは無く切れる包丁を造る事が仕事である。)
霞、本焼の両者を造る時に、鋼が経験する熱が違う事が、一番の理由だと思う。
っとの事。
ここで、刃付屋さんと話した炭素移行についての事を聞いた所、
接合している部分で、それはある可能性があるけど、そこまで吸うような事は無いと思う。
よく、鋼化している軟鉄を見る事があるが、これは炉の中でコークスや炭の炭素が軟鉄と
還元して起きた現象。 だそうです。
ただ、刃付屋さんの言う見解が0では無い。
僕が聞いた鍛冶屋さんの製法だと、そのような可能性は無いと思う。。との事。
鍛冶屋さんも、沢山居るので高温で火造りしてしまう場合、炭素を吸う可能性は否定出来ない。
ついでに、僕の見解。
鋼の方が密度が多いので、本焼きの方が重量感のある包丁に仕上がる。
重量は、切れ込むと言う事に大きな影響を与える。
包丁が切れ込むとき、調理師さんが切ろうとする力が少なくて済むので、
思っているよりも切れる印象を受けるのでは無いかと思う。
霞、本焼き、同じ重量感の包丁を作った場合、本焼の方が薄く作れる。
包丁は、薄い方が物理的に抜けや通りが良くなる。
重量感があって、薄く作れるのも一つの構造的理由。
*疾風が霞にして重量感あるのは、土井さんが軟鉄等を叩きしめて密度を上げてるから。
これらは、製造側からの意見であります。
そして、昨日の記事で頂いた調理師 lovekidoldさんの意見も、実際に調理されている方ならではの
食材との摩擦と言う一つの理由もあるかと思います。
ずらずらと書いてみました。主に、製造側からの内容ばかりですが、何かの参考になれば嬉しいです。
- 2012-04-08